2030年に向けた目指す姿
当グループは、企業理念である「人材重視」「喜ばれる企業」を事業運営の根幹とし、進化するモビリティ社会の中でも魅力ある商品を世界へ送り出していくことで、2030年ビジョンの達成はもとより、持続可能な社会の実現に貢献し、全てのステークホルダーの皆さまから存在を期待され「喜ばれる企業」であり続けることを目指します。
第15次中期経営計画概要2024年3月期~2026年3月期
第15次中期経営計画では、目まぐるしく変化する市場環境への対応や収益性のいち早い回復はもとより、2030年ビジョン達成に向けたさらなる成長を果たすべく「成長戦略」「地域戦略」「機能戦略」の各領域からなる9つの重点戦略に取り組んでいます。また、これまで取り組んできたESG経営の集大成とすべく持続可能な社会へ貢献し、全てのステークホルダーの皆さまから存在を期待され「喜ばれる企業」となることを目指します。
| 経営方針 ESG経営の実現 | ||
|---|---|---|
| 重点戦略 | 取り組みおよび進捗 | |
| 成長戦略 | 1. キャビンコーディネート機能の獲得 |
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| 2. 新事業のさらなる拡大 |
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| 3. 主要客先シェア向上 |
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| 地域戦略 | 4. 北米収益体質のV字回復 |
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| 5. 中国事業戦略の再構築 |
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| 6. 欧州新事業の戦略的拡大 |
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| 機能戦略 | 7. サプライチェーンの再構築 |
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| 8. 環境技術開発の推進強化 |
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| 9. 高効率生産体制の構築 |
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| 基盤 | 人事戦略 / 財務戦略 / 品質No.1評価の獲得 / サステナビリティの浸透・定着 | |
|---|---|---|
当グループは、今後も自動車市場の成長が期待されるインド市場での事業拡大を目的に、マルチ・スズキ向け四輪車用シートのメインサプライヤーであるKrishnaグループと、自動車内装品の開発・製造を行う合弁会社KRISHNA TS TECH AUTO PRIVATE LIMITEDを設立しました。
両社が培ってきた技術と豊富なノウハウを共有し、さらなる付加価値を生み出す商品開発体制を整えることで、既存顧客からの新商権ならびにインド国内の自動車メーカー等の新規顧客獲得に向け、受注活動を積極的に推進していきます。

当グループでは、さらなるコスト競争力強化に向け、国内外におけるサプライチェーンの再構築に取り組んでいます。国内では、3社の部品生産子会社を1社に統合することにより経営資源を集約し、事業運営の効率化を図りました。また、米州地域では、コスト競争力を踏まえ、メキシコで生産していた一部のシートフレーム部品を米国内での生産に切り替えるなど、地域動向を踏まえた最適なサプライチェーンを構築しています。

財務目標の進捗
第15次中期の最終期となる2026年3月期における連結業績見通し(2025年5月14日公表)は、売上収益4,300億円、営業利益165億円、営業利益率3.8%と、上記目標に対して未達となる見込みです。この乖離の主な要因は、目標策定時から自動車業界を取り巻く環境が激変しており、中国地域における日系自動車メーカーの販売不振や、EVをはじめとする新機種の生産計画見直しに加え、米州地域における材料費や労務費の高止まりなどにより収益改善が途上段階にあることが影響しています。こうした環境変化を踏まえると、2030年に掲げた財務目標の達成には高いハードルがあると認識していますが、先行き不透明な事業環境の中でも、変化を的確に捉えながら、戦略および財務目標の見直しを柔軟に進めていきます。
※表は左右にスクロールできます。
| 財務目標 | 第14次中期 実績 | 第15次中期 目標 | 2030年 目標 |
|---|---|---|---|
| 売上収益(億円) | 4,092 | 4,800 | 7,000 |
| 営業利益(億円) | 152 | 440 | 680 |
| 営業利益率 | 3.7% | 9.2% | 9.7% |
| ROE | 1.8% | 8.5% | 10.0% |
| 株主還元 | |||
|---|---|---|---|
| 基本方針 | 業績に左右されない、継続的かつ安定的な還元の実施 | ||
| 配当 | 第15次中期末 DOE 3.5%以上に向け安定増配 | ||
| 自己株式取得 | 第15次中期累計200億円規模の機動的な自己株式取得と適切な消却 | ||
価値を生み出す各セグメント
当グループは、日本をはじめとする各地域を4つのセグメントに分けて事業を展開しています。商権の拡大を図るとともに、自動化設備の導入や生産ロスの削減、原価低減に努めることで、持続的な事業成長を図っています。
※表は左右にスクロールできます。
| 日本 | 米州※1 | 中国 | アジア・欧州※2 | |
|---|---|---|---|---|
| TSグループ法人数※1 | 8 | 16 | 9 | 12 |
| 社員数(人)※2 | 2,274 | 8,232 | 1,769 | 1,888 |
| 二輪事業収益(百万円)※3 | 4,379 | 300 | — | 3,523 |
| 四輪事業収益(百万円)※3 | 68,547 | 254,123 | 68,019 | 38,533 |
| (シート) | 65,439 | 225,794 | 66,545 | 35,424 |
| (内装品) | 3,108 | 28,329 | 1,474 | 3,109 |
| その他事業収益(百万円)※3 | 15,069 | 7,921 | — | 95 |
| 合計(百万円)※3 | 87,995 | 262,345 | 68,019 | 42,153 |
| 設備投資額(百万円) | 6,330 | 11,588 | 1,597 | 2,138 |
| 売上収益(百万円) | 110,467 | 263,555 | 70,814 | 45,050 |
| 営業利益(百万円) △は損失 | 10,359 | 6,111 | 7,449 | △925 |
| 営業利益率(%) | 9.4 | 2.3 | 10.5 | ー |
2025年3月末時点
- テイ・エス テックとその子会社および重要な海外関連会社をカウントしています。
- 当社および連結子会社に所属する社員が含まれています。
- セグメント間取引については相殺消去し、外部顧客への売上収益を表示しています。
セグメント市場分析
各地域の市場環境や世界情勢の変化に伴い、当グループが事業を展開する各セグメントにおいても、ビジネス環境は大きく変化しています。こうした状況に的確に対応するため、当グループでは第15次中期経営計画に地域戦略を組み込み、それぞれの地域の特性に応じた施策を加速させています。
日本地域

市場分析
日本の自動車市場は、少子高齢化や人口減少、若年層の車離れといった社会構造の変化により、需要の縮小傾向が続いています。さらに、市場はすでに成熟しており、買い替え需要が中心となる中で、顧客ニーズの多様化やライフスタイルの変化に対応した製品開発が販売動向を左右します。そのため、自動車メーカー間の競争は一層激化しており、コスト競争力に加え、品質、燃費、快適性、安全性能といった総合的な商品力が問われています。加えて、原材料価格や物流コストの上昇といった外部環境の変化も合わさり、収益に対するリスク要因となっています。
また、お客さまの生産地最適化により、海外生産機種が国内市場向けに供給されるケースが増加しています。これに伴い、当グループにおいては埼玉地域における生産機種の構成に変化が見られ、従来とは異なる生産体制への対応が求められています。一方、浜松地域では新たに受注したスズキ スペーシア用リアシートの生産が開始されており、堅調な生産活動を継続しています。
■現在の課題
今後も自動車メーカー間の厳しい競争が続く中で、お客さまの生産台数変動に柔軟に対応しつつ、安定した収益確保が可能な強靭な体質への変革が不可欠です。生産領域においては、工場内の部品搬送・組立・検査・出荷工程等の自動化を一層拡大し、生産効率や柔軟性を向上させることで、多様化する製品ニーズに迅速に応える体制を構築する必要があります。さらに、AI等のデジタル技術を積極的に活用した製品検査の自動化や設備トラブル兆候監視システムによるメンテナンス・トラブル対応の工数削減等、新たな技術開発が今後のさらなる競争力強化の鍵となります。
■今後の目標
日本地域においては、各工場でのさらなる生産効率化に加え、当グループのマザー工場として、より安定的かつ高効率な生産を可能とする生産技術の創出拠点を目指します。
具体的には、埼玉工場に新設された生産技術棟において、新機種のパイロットラインを活用した製品仕様や製造設備の事前検証を通じて、開発から量産へのスムーズな移行を実現させるとともに、世界各地のグループ拠点支援を行っていきます。さらに、デジタル技術を活用した製造技術の早期導入に向けた研究開発を加速させ、高効率生産体制の構築による収益性の向上を図ります。
米州地域


市場分析
米州最大の自動車市場である米国における2024年1月~12月の年間新車販売台数は1,600万台を超え、新型コロナウイルスの流行以降で最多の水準となるなど、自動車市場は徐々に回復基調を示しています。今後も堅調に推移するものと期待されていましたが、米国の環境政策の転換により、EV販売は減速傾向にあり、その影響によるお客さまの開発計画見直しが発生するなど、先行きは不透明な状況です。さらに、通商政策の動向次第では、サプライチェーン全体における生産アロケーションの見直しや再構築が必要になる可能性もあり、業界全体に混乱が生じるリスクが懸念されています。加えて、全米自動車労働組合(UAW)の賃上げ要求等の影響による人件費高騰も続いており、複合的な課題に対し、柔軟な対応が求められています。
■現在の課題
第15次中期の重点戦略の一つである「北米収益体質のV字回復」を達成するためには、“人”に依存しない、さらなる自動化の推進・効率化が課題であると認識しています。
業界全体での生産アロケーション見直しやEV普及の進行状況等、市場動向が不透明な中、フレキシブルな生産に対応できる体制の構築が急務です。
また長期的には、カーボンニュートラルの実現やリサイクル素材の使用義務化といった環境規制への対応も避けては通れない課題です。これらの環境変化に対し、部品・材料調達や物流の安定性等を担保していくことも必要不可欠です。
■今後の目標
生産体制としては、EVとガソリン車、いずれの台数増減にも柔軟に対応できる体制が整いつつあります。併せて、どのような状況下でも安定的に部品を調達できるサプライチェーンの構築も推進し、あらゆる環境変化に負けない高収益体質を構築していくことで、着実な収益のV字回復を図ります。
北米地域における収益体質の改善は、目先の課題を乗り越えるだけの短期的目標ではなく、将来を見据えた当グループ全体の収益構造強化の礎になると考えています。引き続き、高収益体質への変⾰を目指し、自動化等による徹底した効率化に取り組んでいきます。
中国地域


市場分析
中国地域では近年、EV市場の拡大にいち早く対応した中国自動車メーカーの台頭により、市場環境が激変しています。それにより、日系自動車メーカーのみならず各国の自動車メーカーもこれまでにないほどの苦戦を強いられています。そのような状況下でも、当グループは環境変化をいち早く察知し、2023年から生産体制の最適化を強力に推進することで、利益改善に努めてきました。しかしながら前年に引き続き、想定を上回るお客さまの大幅な減産影響を受け、2025年3月期も減収減益を余儀なくされています。中国自動車メーカーの躍進は、各国の自動車メーカーに引けを取らない先進性や機能性と、圧倒的な価格競争力を両立させたプラグインハイブリッドEVやバッテリーEVを成長ドライバーとして、今後も続いていくものと予想されます。
■現在の課題
現在の中国地域における自動車のニーズは、先進性・機能性と低価格の両立です。その中で、当社の喫緊の課題は、さらなるコスト競争力の獲得であると認識しています。これまでは日本の品質基準に基づいて材料・部品の仕様要件を設定してきましたが、中国自動車メーカー各社が採用している現地の要求水準に合わせるとともに、製造の工程改善や固定費削減等、あらゆる面から原価低減を実現しなければ、競合相手と互角に渡り合うことはできません。また、売上拡大に向けた新規受注獲得も重要なテーマであり、中国特有の開発スピードに追従する開発体制の構築・リソース確保も重要課題と捉えています。
■今後の目標
厳しい市場環境が続く中国地域ですが、国内新車販売台数が3,000万台を超えてもなお成長を続けている巨大市場として、当グループの事業戦略上、重要な地域であることに変わりはありません。こうした厳しいときこそ、大きな成長の機会があります。当社の主要顧客であるホンダをはじめとする自動車メーカー各社および、共に事業を推進する合弁パートナーとの協力・信頼関係をさらに強固なものとしながら、開発・製造の体質強化と拡販の両輪を主要施策として推進していきます。これにより、中国市場における自動車内装品サプライヤーとしての地位を確固たるものとしていきます。
アジア・欧州地域


市場分析
当グループにおけるアジアの四輪車用シート生産国であるタイ・インドネシア・インドの市場環境は二分化しており、タイ・インドネシアでは2018年をピークに自動車生産台数が伸び悩む一方、インドでは2024年に年間生産台数が600万台を超え、今後も大きく成長していくと予想しています。各国政府が掲げるEV普及政策を後ろ盾とした中国自動車メーカーの台頭や、インドでの韓国・地場メーカーの成長などにより各国の自動車市場シェアは大きな変動を見せています。こうした環境下にあることから、ホンダグループを主要顧客とする当グループにとって、いずれの国でも厳しい競争状況が続いています。また、欧州地域ではEV市場が踊り場を迎え、欧州自動車メーカーの開発スケジュールが後ろ倒しになるなど、目まぐるしく市場環境が変化しています。
■現在の課題
アジアの自動車市場は今後も成長が期待されており、アジア地域における売上拡大は、当グループの持続的な成長にとって重要な鍵となります。しかし、各国市場において日本車のブランド力に陰りが見られる中、これまでの限られた顧客だけをターゲットとしたビジネスを続けていては、将来の可能性を狭めることになりかねません。過去の成功モデルを前提としない新たなアプローチを模索し、新規顧客・新商権を獲得していくことが急務です。また、複数の国で事業を行っているアジア地域の特性を活かした、地域横断型の原価低減による利益貢献の実現も、当グループの競争力向上には欠かせないものとなります。
■今後の目標
アジア地域においては、新規顧客・新商権の獲得が最優先事項です。2025年にはインド四輪車市場でトップシェアを誇るマルチ・スズキの主要シートサプライヤーである、Krishnaグループと、シート開発・部品製造を行う合弁会社を設立しました。地域ニーズに応える開発力をもって、マルチ・スズキ商権の受注拡大はもとより、インド国内の自動車メーカーからの新規受注を目指します。また、タイではこれまでの営業体制を刷新し、地域統括拠点に事業開発部を構え、新規顧客への新たなアプローチを開始しています。これらの取り組みを確実に成果へとつなげ、アジア地域を当グループの「企業成長リーダー」とすべく、邁進していきます。