バリューチェーン(価値創造戦略)

当グループは、良質な商品とサービスを提供する「モノづくり」によって価値創造を実現しています。
60年以上にわたってステークホルダーの皆さまに支えられながら培ってきた、あらゆる経営資源を基に、バリューチェーンが互いに連携しながら機能していくことで、企業価値の最大化を図っています。

バリューチェーン
  • 公正・公平な取引を実現し、お取引先とwin-winの関係をグローバルに構築・維持するために定めた原則
  • Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)
  • 「テイ・エス テック統合報告書2024」発行時点(2024年9月30日)の役職を記載しています。

研究・開発

当グループの事業の強みである「安全」「環境」「魅力商品」を軸とする先進技術の進化によって、より一層の企業価値向上を果たすべく、次世代車室内空間の新たな価値創造に向けた研究開発に積極的に取り組んでいます。また、マテリアリティと2030年目標の達成に向けて革新技術開発・環境技術開発を加速させ、いち早い製品化に取り組んでいきます。

従来技術の延長線上で考えていては、新たな価値創造は実現できません。企業理念の一つである「人材重視」の下、技術者の育成とともに、若手技術者が生み出す多様なアイデアでイノベーションを起こし、これまでにない独創的な技術を創出していきます。

代表取締役 専務執行役員 開発・技術本部長 鳥羽 英二の写真

価値創造の基本方針

研究・開発SWOT分析

2024年3月期の主な取り組み

キャビン商品・技術の具現化と環境技術の開発

2024年3月期は、車室内空間全体で新たな価値を創造する技術である、車室内の自由なシートアレンジを実現するロングスライドレールや安全性、エンターテインメントの没入感を高めるシート振動機能、電力消費を抑えつつ心地よい移動を実現する空調システムなど、お客さまへの技術提案活動が実を結び、目標を上回る将来機種への採用につながりました。

また、植物原料を配合したバイオマスウレタンや鉄スクラップを電気溶解した電炉鋼材、リサイクル樹脂材料など、従来の材料と異なるサステナブルマテリアル※2の特性を踏まえ、シートに求められる性能を満たす構造の研究に取り組むなど、環境負荷の低減につながる材料置き換え技術の開発を加速させています。

今後の主な取り組み

キャビンコーディネート機能の獲得

自動運転技術やEV化が進んだ次世代自動車市場において、新たに求められる機能や技術を創出するため、車室内空間全体を魅力商品として提案できる企業へと進化すべく、次世代自動車への乗車を想定した“人”に関わる基礎研究や、人中心の車室内空間シート制御技術、他業種とのコラボレーションで創り出すこれまでにない機能の確立に向け、研究開発を加速させています。当社の技術を結集し、今期は自動車メーカーの各車両ごとのパッケージ提案や魅力ニーズに合わせた製品の具現化に取り組んでいます。また、2030年以降を見据えた次世代自動車に向け、若手技術者の自由な発想を積極的に採用した新価値創出プロジェクトにも取り組んでいます。

  • 海外拠点も含めた各部門を取りまとめるLPL(ラージプロジェクトリーダー)を配置し、企画立案から量産までをトータルマネジメントする開発体制
  • 継続的に利用可能な資源から得られ、ライフサイクル全体で環境への影響が小さい原材料

営業(ホンダグループ)

主要顧客である本田技研工業株式会社および同社の関係会社からなるホンダグループとのビジネスは、当グループにとって重要な事業基盤であり、さらなる事業成長を遂げるべく、2030年のホンダグループ向け四輪車用シートシェア70%以上を目指していきます。

EV化や自動運転技術の進化により激変する自動車業界において、当グループが有する世界13カ国44法人のグローバルネットワークを活かし、地域ごとに多様化するニーズを見据えた商品をスピーディーに提案することで、今後も世界中のお客さま(ホンダグループ)・エンドユーザーの皆さまから「喜ばれる企業」であり続けるとともに、さらなるシェア向上に取り組みます。

常務執行役員 営業・購買本部長 宗村 聡の写真

価値創造の基本方針

営業SWOT分析

2024年3月期の主な取り組み

環境変化に伴うお客さまニーズの先取り

自動車業界を取り巻く事業環境は急激に変化しており、お客さまは経営資源のさらなる有効活用を図るため、新たな共通プラットフォーム開発を進めています。それに伴い、サプライヤーには、開発期間の短縮や原価低減はもとより、セダンからSUVまで幅広い車種に搭載可能な汎用性などが求められており、これらの要求を満たさなければさらなるシェア向上は成し得ません。当グループでは、開発上流からお客さまと緊密に連携を図り、お客さまニーズを各本部やサプライチェーンへ早期に展開することで、従来以上にお客さまの期待を超える価値を創出する開発スキームを構築しました。次世代機種開発に展開することで、お客さまの求める仕様とコストの両立を実現し、確実な商権獲得につなげています。

今後の主な取り組み

時流の変化を捉えた営業活動

自動運転技術やEV化が進んだ次世代自動車市場において、さらなる新商権獲得を図るためには、従来の枠にとらわれない新しい価値の提案とさらなる価格競争力の向上が不可欠です。市場動向やお客さまのニーズを的確に捉え、自社に不足するリソースをさまざまな角度から分析・改善することで、より一層の価格競争力向上につなげていきます。また、お客さまや社会のサステナビリティへの関心は年々高まっており、当グループが今後も「喜ばれる企業」であり続けるためには、事業を通じたサステナビリティへの貢献が不可欠です。環境負荷低減につながるサステナブル材やリサイクル材の適用など、今後もお客さまの期待を超える商品を提案していきます。

営業(新事業)

当グループは、主要顧客であるホンダグループの戦略的パートナーとして、着実な成長を遂げてきました。

しかしながら、外部環境変化による収益減少リスクを低減し、さらなる事業成長を遂げるためには、ホンダグループ以外の新たなお客さま向けの商権を拡大し、「新事業」領域での商権拡大が不可欠です。

2030年目標である、売上に占める新事業割合30%を達成するためには、常に自動車業界の動向を先読みし、お客さまのニーズをくみ取った戦略的な技術営業活動が必要です。新事業統括本部がリーダーシップをとり、全世界のお客さまへ「喜ばれる魅力商品」を提案することで、新事業拡大を目指していきます。

執行役員 新事業統括本部長 永山 昌樹の写真

価値創造の基本方針

営業(新事業)SWOT分析

2024年3月期の主な取り組み

お客さまニーズに寄り添ったさらなる新事業拡大

新たな商権獲得に向け、次世代車室内空間で求められる機能や技術のプレゼンテーションを各自動車メーカーに向けて行っています。新たなお客さまごとのニーズをくみ取った積極的な技術営業活動が実を結び、先行開発への参画打診をいただくなど、新規商権獲得につながる成果が表れはじめています。

既存のお客さま向けにも、当社のシートアレンジ技術を活かしたコンパクトな格納機構や、多様な使い方で利便性・快適性を向上させる新たな付加価値を提案したことで、スズキ株式会社から発売された新型SPACIAのリアシートを受注するなど、商権拡大につながりました。さらに、インド国内で最大のシェアを誇るマルチスズキ向けの商権拡大に向け、インドにおける新工場建設に着手するなど、さらなる事業拡大およびコスト競争力強化を図っています。

今後の主な取り組み

欧州新事業の戦略的拡大

当グループでは、ドイツ・ポーランドに拠点を置き、フォルクスワーゲングループをはじめとした欧州自動車メーカーとのさらなるビジネス拡大に注力しています。ポーランドの四輪車用シート生産会社は、2024年4月に欧州自動車メーカー向け新型EVの3列目シート生産を開始するなど、本格稼働が始まりました。欧州の各拠点が連携し、ドイツ、チェコ、スロバキアなどに点在する自動車メーカーへ向け、立地特性を活かした価格競争力のある製品供給と積極的な営業展開により、既存顧客からの商権拡大に加え、新たなお客さまとのリレーションを構築していきます。また、将来の受注増加を見据えた生産能力拡大に加え、サプライチェーンを含めた生産体制の最適化を図ることで、着実な新規商権獲得につなげ、欧州事業の確立を目指します。

購買

当グループを取り巻く事業環境は近年急激に変化しており、さらなる企業価値向上を図るためには、従来の枠組みにとらわれない抜本的なサプライチェーンの再構築による価格競争力向上が必要不可欠です。また、ステークホルダーからの要請に応え、存在を期待され「喜ばれる企業」であり続けるためには、サプライチェーン全体でサステナビリティに関する取り組みを強化する必要があります。最大付加価値の創出や安定供給に向けた予防予知、CO₂排出量の削減の3つの軸から、自社だけでなく、お取引先の皆さまと一体となった取り組みにより、グローバルで強靭かつサステナブルなサプライチェーンを実現していきます。

常務執行役員 営業・購買本部長 宗村 聡の写真

価値創造の基本方針

購買SWOT分析

2024年3月期の主な取り組み

環境変化に対応できるサプライチェーンの再構築

EV化や自動運転技術の進化など次世代自動車への移行が進む中、自動車の利益構造の変化を受け、お客さまからの要求は一段と高まりつつあります。また近年、エネルギーや労務費などの高騰による調達コスト影響は著しく、当グループが今後もお客さまのニーズに応え持続的な成長を続けていくためには、外部環境変化に柔軟な対応ができるサプライチェーンの再構築が必要不可欠です。

2024年3月期は、従来の調達構造や商習慣を徹底的に見直し、複雑化した調達ルートのスリム化や新規メーカーの採用拡大を図ることで、当グループの収益性と競争力の向上に取り組みました。また、安定的な製品供給体制をより強固なものとすべく、有事の際の初動対応迅速化など、予防予知の観点でリスク管理強化を図ることで、調達構造の安定化に努めました。

今後の主な取り組み

持続可能なサプライチェーンの実現

当グループでは、サステナビリティに対する考え方を全世界のお取引先と共有し、共に推進していくために「TS TECHサプライヤーサステナビリティガイドライン」を制定しています。

特に環境領域においては、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、お取引先と共に省エネルギー施策や再生可能エネルギーの導入を推進していくことで、サプライチェーン全体でCO₂排出量の削減に取り組みます。当グループがイニシアチブを取り、お取引先の皆さまと一体となってさまざまなリスクの軽減に取り組み、法令・社会規範を遵守した持続可能なサプライチェーンを実現していくことで、今後も社会から存在を期待され「喜ばれる企業」であり続けることを目指します。

生産

大変革期にある自動車業界において、当グループが持続的な成長を遂げるためには、当グループの根幹である「モノづくり」の進化による企業体質の強化が不可欠です。2030年ビジョン達成に向けた成長戦略を実効性あるものとするために、競合他社に対し優位性を発揮できる高効率な生産体制構築を図っていきます。

従来より推進してきた「生産ラインの自動化」「サステナブルな生産ラインの構築」「生産サプライチェーンの効率化」による原価低減を3本柱に、仕様と造りの融合をキーワードとして、他社を凌駕する高効率な生産体制をグローバルで構築することにより、持続可能な「モノづくり」へと進化させていきます。

取締役 常務執行役員 生産本部長 須﨑 康清の写真

価値創造の基本方針

生産SWOT分析

2024年3月期の主な取り組み

高効率で持続可能なモノづくりへの進化

高品質な製品をより一層競争力ある価格で安定的に世界に送り出すために、DXやIoTなどの先進技術による徹底的な効率化に加え、AI解析による品質判定システムを活用した自工程保証の強化に取り組みました。さらに、生産体制の進化には自動化の推進はもちろん、生産を支える社員一人ひとりが働きやすい環境づくりが重要であり、現場を理解する社員が造り出す、作業負担を軽減する内製設備の開発機能を強化しています。

また、環境負荷低減施策として、設備エキスパートによる省エネルギー診断を日本から世界の拠点へ水平展開するとともに、回生エネルギー※1を利用した設備の開発や電力を使わずに作業を自動化する“からくり”機構の考案など、さまざまな観点から生産領域におけるCO₂排出量の削減とエネルギーコストの低減に努めました。

今後の主な取り組み

サステナブルな生産体制

「モノづくり」領域からの企業体質進化に向けて、グローバルマザーとしての機能強化により、競合他社を凌駕する高効率生産・製造技術の構築に取り組んでいきます。EV化や自動運転技術の進化により生じる原材料・製品構造の変化に対応するため、埼玉工場内に新機能や工法、材料、生産性などを事前に検証する”生産技術棟”を新設し、造り技術および自動化技術の実証とグローバル発信の強化を加速していきます。併せて、国内の主要生産拠点である埼玉地区の再編に取り組み、高効率な生産体制の構築に向けてモノの流れを基点とした工場全体のレイアウト見直しを図るとともに、域内生産体制の集約による物流費や固定費のスリム化を通じた収益体質の強化を図ります。

品質

昨今、自動車業界では品質に関わる問題が後を絶たず、業界全体に対する信頼が揺らぎかねない事態となっています。当グループの製品は人命を守る大切な部品の一つであり、それゆえに品質に対するお客さまからの信頼なくしては当グループの企業価値向上は成し得ません。

品質教育の徹底や改善事例の共有、お取引先を含めた啓発活動を通じて、サプライチェーン全体の品質意識向上を図るとともに、各生産拠点との連携による工程管理の検証会や改善活動を展開することで、さらなる現場力強化を図っていきます。品質は企業の生命線です。グループ一丸となって、品質高位安定化を図ることで、「喜ばれる企業」であり続けることを目指します。

執行役員 品質本部長 木田 喜明の写真

価値創造の基本方針

品質SWOT分析

2024年3月期の主な取り組み

品質マネジメント強化

2024年3月期は、品質マネジメント強化を目的に、品質本部がリーダーシップを取り、各拠点の品質保証プロセスのモニタリングと品質改善サイクルの運用状態を検証することで、グループ全体でのさらなる品質向上と高位安定化を図りました。また、品質保証における重要管理ポイントの整理およびグループ内への水平展開、各拠点が正しいプロセスで品質保証ができているかのモニタリングを徹底することで、品質課題の未然防止を可能とする体制構築に取り組んでいます。各拠点との連携により集められた品質データは、デジタル技術やAIを活用することで、潜在的な品質課題の抽出による早期改善と品質管理強化に活かしています。

今後の主な取り組み

品質啓発・意識向上による品質保証底上げ

品質本部と世界のグループ拠点が連携し、グローバルで統一された継続的な品質教育の実施による各拠点の品質意識レベル向上や、改善活動とその成果を水平展開することで、グループ全体の品質体質底上げを目指します。また、お取引先を含めた品質改善活動の促進を図ることで、サプライチェーン全体で強固な品質体質を構築していきます。

品質問題の根底にあるのは品質意識の低下であり、グループ一丸となってさらなる品質意識の向上と管理の徹底に努めていきます。全世界のお客さまから信頼される品質管理・保証体制を実現し、品質高位安定化を図ることで、今後も存在を期待され「喜ばれる企業」であり続けるべく、取り組みを加速させます。

バリューチェーンの取り組み事例

お客さまニーズに寄り添ったさらなる新事業拡大ースズキ SPACIAー

2023年11月に発売されたスズキ株式会社の新型「スペーシア」「スペーシアカスタム」に、当社製のリアシートが搭載されました。今回の新商権獲得にあたり、特に力を入れたのがお客さまの機種開発責任者であるチーフエンジニア(CE)へのアプローチです。独自の市場調査と先行開発に基づく数々の技術を直接提案できたことが受注につながりました。

お客さまから最初に要望いただいたのは、シートによる利便性の向上です。先代モデルの課題であった、シート格納時の背面(荷室床面)に生じるわずかな傾斜を無くし、荷室の拡大を実現させました。また、お客さまと共に実現させた「マルチユースフラップ」も利便性向上に大きく貢献しています。フラップをオットマンとして使用するだけでなく、上向きにする「荷物ストッパー機能」が新たに追加されたことで、リアシートが「座席」だけでなく荷物を「安心して置ける場所」にもなりました。座り心地を損なわない最適な構造により、当社のモノづくりの根幹である快適性も両立しています。

今回、お客さまと一体となって開発を進められたことで、より多くのエンドユーザーの心に響くシートを開発することができました。お客さまからは次のビジネスのお声掛けをいただいており、さらなる新事業拡大に向けた大きな一歩となりました。

オットマンとして使用・荷物置きとして使用

「体質進化」を合言葉に始まった一大プロジェクトーホンダ N-BOXー

2023年10月に発売された本田技研工業株式会社の新型「N-BOX」に、当社製のリアシートが採用されました。このシート開発は、お客さまから「今まで以上に高い生産効率を目指す」というサプライヤー各社へのお声掛けの下、「体質進化」をキーワードとした5年にわたる一大プロジェクトとなりました。

高い生産効率の実現に向け、仕様・造り・コストとあらゆる面で改善施策が検討され、その一つが仕様のシンプル化です。製品としての上質感を損なわずにシートデザインを工夫することで、表皮の縫い付け箇所を減らし、量産時の工程数を削減しています。また、生産を担う当社鈴鹿工場の生産ラインもこれまで以上に進化させており、他機種で個別に導入していた部品締結や外観の仕上げ工程の自動化設備導入、生産工程の見直しなど、多くの要素をN-BOX用のシート生産ラインに複合投入することで、従来は自動化が困難であったシート組立工程の自動化率を向上させ高効率な生産を実現しています。

さまざまな改善施策の結果、このプロジェクトでは、先代モデルに比べ組み立て工数3割削減を達成しており、今回のノウハウは、国内外の生産拠点へと水平展開していくことで、グループ全体での高効率な生産体制構築へとつなげていきます。

自動化設備 自動化設備