2026年10月23日
モノづくり
クルマのシートが人の“心”を動かす⁉
「心拍を測る」から「働きかける」へ
心拍提示振動機能が切り拓く、シートの新たな可能性
運転中に襲う眠気。急な飛び出しにヒヤリとした瞬間。
そして、大切な人とのデートで高鳴る鼓動。
もしシートが、そんな心や体の変化を感じ取り、そっと支えてくれるとしたら。
心拍センシングと振動技術を掛け合わせ、
新たな価値創造に挑むプロジェクトメンバーの皆さんに想いを伺いました。
Profile
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釜野 健一
電装開発部
PL(プロジェクトリーダー)
2011年入社。電装開発部に配属され、ドアトリムなどの照明領域を経て、シート開発に携わる。特にHMI※領域を担当し、振動デバイスを活用した、「心拍提示振動機能」プロジェクトのPLとして推進中。
※Human Machine Interface:人間(ドライバーや同乗者)と機械(自動車やシステム)の間で情報や意思のやり取りを行う仕組み。 -
清水 俊行
電装開発部
エキスパート
2024年入社。電装開発部に配属。前職では自動車メーカーにてドライバー状態評価の研究開発に従事。本プロジェクトでは、大学との共同研究や評価プロトコルの構築を担当し、技術の有効性を学術的に検証する役割を担う。
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木幡 耕平
電装開発部
前PL
2010年入社。電装開発部に配属され、ECU開発やシートメモリー関連商品の開発に携わり、「心拍提示振動機能」の前身となる心拍センシングや眠気検知など、人の状態を理解する技術の研究に取り組む。
釜野最も苦労したのは、「本当に効果があるのか」を証明することでした。開発初期には論文を参考に社内検証を行いましたが、期待どおりの結果が得られず、試行錯誤を重ねた時期もありました。また、「眠気」や「覚醒」、「緊張」といった目に見えない状態をどのように定義し、評価するのかも大きな課題でした。そこで、この分野に知見を持つ大学との共同研究を通じて科学的な評価手法を構築し、検証を重ねた結果、自動車技術会で研究成果を発表することができました。
清水今回のプロジェクトを通じて、改めて評価プロトコル※の重要性を実感しました。同じテーマであっても、試験環境や評価指標が異なれば、結果の信頼性は大きく変わります。
大学との共同研究では、客観性と再現性を重視しながら評価手法を構築し、その考え方やノウハウを蓄積することができました。こうして得られた知見は、人の状態や感覚に着目した今後の研究開発においても、大きな強みになると考えています。
※研究結果を公平かつ客観的に測るための一連の手順、基準、ルールをまとめた計画書や仕組み。
釜野まずは、お客さまへの提案活動を継続し、この技術をより多くの方に知っていただくことが目標です。また、心拍提示振動機能だけでなく、振動デバイスを活用したさらなる機能拡張にも大きな可能性を感じています。覚醒支援や緊張緩和等、ソフトウェアアップデートによって新たな価値を追加できることも、この技術の魅力です。
さらに、自動車分野にとどまらず、エンターテインメント領域を含む幅広い分野への展開可能性を探っていきたいと考えています。
清水私は2024年の入社以前から、ドライバー状態評価の研究開発に携わってきました。このプロジェクトでは、多くのメンバーと協力しながらシート開発への理解を深めるとともに、シートメーカーならではの視点を学ぶことができました。人の状態を理解し、一人ひとりに合わせた体験を提供する技術は、自動車業界において今後ますます重要になると考えています。この技術を世の中へ送り出し、実際にユーザーの皆さまに使っていただけるところまで実現させたいですね。
木幡私は、こうした先行研究を継続していくこと自体に大きな意義があると考えています。すぐに商品化へ結び付くテーマが重要であるのとともに、同じように将来の技術の種を育てることも大切だと考えています。心拍センシングの研究を続けてきたからこそ、今回の心拍提示振動機能へと発展させることができました。将来振り返ったときに、「あの時の研究が、今の技術や製品につながっていた」と言えるような、そんな研究をこれからも続けていきたいですね。