2026年02月05日
新機種紹介
移動時間に身体をケア!
姿勢改善アドバイザー「ヘルスケアシート」が目指すもの
“車の移動時間を、身体を整えるセルフケア時間に”
そんな想いを込めて、当社は「ヘルスケアシート」の開発に取り組んでいます。
モビリティの進化とともに、車室内空間の重要性が高まる今、
新たな価値創造に挑み続ける、プロジェクトメンバーにお話を伺いました。
Profile
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溝井 健介
開発試験部
「相棒シート」 開発担当
2001年入社。入社以来、一貫して開発試験部に所属し、さまざまな先行開発に携わる。ヘルスケアシートの前身となった「相棒シート」の発案者の一人でもあり、その開発プロジェクトの全体統括を担当。
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山内 直人
開発試験部
前PL(プロジェクトリーダー)
2010年入社。商品開発部に配属され、電装部品の開発などに従事。開発試験部に異動後は、商品性検証や健康関連技術の研究に携わり、本プロジェクトでは商品性確立までの間、PLとして全体統括を担当。
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押野 優汰
開発試験部
PL(プロジェクトリーダー)
2018年入社。商品開発部に配属。開発試験部への異動後、山内よりPLのバトンを受け取り、ヘルスケアシートの量産化を目指して、本プロジェクトを推進中。
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松下 晴菜
開発試験部
試験・評価担当
2024年入社。開発試験部に配属となり、Honda「プレリュード」のシート開発などに携わる。理学療法士の資格を有しており、本プロジェクトではその知見を活かし、試験方法や評価指標の最適化などを担当。
溝井当社には、さまざまな部門から若手~中堅クラスの社員を集め、「座る」を科学する“座ラボ”という社内プロジェクトがありました。そこから生まれたのが、ヘルスケアシートの前身となる「相棒シート」です。
相棒シートのコンセプトは、“座った瞬間にあなたのことを理解し、助けてくれる、相棒のように身近なシート”です。乗員の状態を検知して理想の形状を提案し、個人に応じた快適で疲れにくいシートを提供することを目指していました。(図1)
開発を進める中で、姿勢認識機能や運転姿勢をサポートする機能、眠気を検知する機能など、さまざまな機能を入れ込んできました。ですが、本当に社会から必要とされているものが何なのかという視点に立ったとき、高齢化社会の進行や健康志向の高まりといった領域にニーズがあると考え、現在のヘルスケアシート開発へと発展していきました。
松下猫背は、太ももの裏側にある筋肉のハムストリングスが硬くなり、骨盤が後ろに傾きすぎてしまうことで起こりやすく、それが腰痛要因の一つと考えられています。そこでヘルスケアシートでは、エアセルを膨らませ、ハムストリングスを揉みほぐして柔軟性を高めたり、腰椎部分(腰の骨あたり)へ加圧を行うことで、理想的な姿勢への改善を手助けします。(図4)
実際に、社内の複数人で1カ月の継続使用による実証実験を行ったところ、柔軟性の向上と、姿勢改善の傾向が確認できました。
さらに拡張機能として、社内で別テーマとして着手していたフェムテック※研究とも連携し、生理痛をやわらげることを目指したモードも検討しています。腰回りのエアセルを膨らませ、骨盤を支えて安定させつつ、ヒーターによる温めと血流を促すマッサージを組み合わせることで、女性特有の健康課題の解決にもアプローチしています。(図5)
※Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけ合わせた造語。
「生理・月経」「妊活」「妊娠期・産後」「プレ更年期・更年期」など女性特有のライフステージごとの健康課題をテクノロジーで解決していこうとする研究のこと。
溝井どれだけ魅力のある商品を開発しても、それが車に搭載され、エンドユーザーの皆さまに使っていただかなければ、私たちの想いを形にすることはできません。そのためには、機能だけでなく価格も含めてお客さま(自動車メーカー)にとって、魅力的な商品でなければなりません。
その点、ヘルスケアシートは、ユーザーの操作による揉みほぐしに加えて、姿勢や体格を測定しフィードバックするという機能面の強みがあります。さらに駆動用のモーターや体圧センサーを使用せず、エアセルまわりの仕組みだけで構成できるため、コスト競争力の面でも優位性を持たせられると考えています。
2022年と2024年に開催した当社独自の技術展示会「次世代車室内空間発表会」にヘルスケアシートを出展しており、多くのお客さまからご関心をお寄せいただきました。現在は、お客さまからのご意見にお応えし、さらに商品性を高めていくべく、研究開発を進めています。
押野同時に、耐久性や他部品との干渉確認など、製品として成立させるための仕様検証にも力を入れています。近年、シートの多機能化とともに、多くのセンサーや電装部品が必要となっており、限られたスペースの中でお互いに影響が出ないように、ヘルスケアシートの部品をどう収めるかは大きな課題の一つでした。
これまでも、各部位に配置した複数のセンサーによる測定方式を見直し、バルブ内蔵センサーをミニマム化したシンプルな構造とするなど、部品の統合化による軽量化とコスト低減を同時に達成してきました。
現在はさらに細部まで検討を進め、エアセル形状の最適化や、関連部品をコンパクトなものへ変更していくなどして、より製品として搭載しやすいパッケージを作り込んでいます。エアセルの形が変わることによって、揉みほぐしの効果が損なわれないか再検証が必要になるなど、簡単ではありませんが、他の装備の機能を阻害することなく、さらに快適性を高めていくために試行錯誤しながら開発を進めています。
松下これまでは健康な社内のメンバーを中心に評価を進めてきましたが、より実効性を高めるためには、高齢の方や持病のある方など、さまざまなバックグラウンドを持つ方々にも協力いただき、より多角的な観点で研究を進めていきたいと考えています。
また、自動運転など新たなモビリティ技術が普及することで、車室内空間には若年層からシニア層まで幅広いニーズに応えられる快適性や魅力が求められるようになります。家の中のようにリラックスでき、心身を整えられる空間として進化していけるよう、今後も継続して効果検証を進めていきます。
溝井最終的には、“このシートがあるからこの車を選びたい”と思っていただけるような存在にしたいですね。車室内での過ごし方が多様化する中、シートが提供できる価値はさらに広がるはずです。フロントシートに限らず、リアシートにも展開し、快適性と健康へのアプローチを両立できるシートとして広げていきたいと考えています。
前身モデルから受け継ぐ “ユーザーに寄り添う相棒” というコンセプトを大切にしながら、「喜ばれる企業」であり続けるために、今後も世界中の皆さまからの期待を超えた商品と、魅力的な付加価値を提案していきます。
※本プロジェクトは自動車用シートの関連技術の一つとして研究・開発を進めており、医療用機器としての製造・販売を目的としたものではありません。