対談:世界ゆるスポーツ協会×愛されるシート

愛されるシート 開発プロジェクトリーダー 郭 裕之の写真 世界ゆるスポーツ協会 代表理事 澤田 智洋様の写真

当社と世界ゆるスポーツ協会(以下、ゆるスポ)は、2019年5月にシート技術とIoTを融合させた「愛されるシート」を活用した、誰もが座ったままで楽しめる新しいゆるスポーツ※1競技「緩急走(かんきゅうそう)※2」を開発・発表しました。開発に至った経緯や想いについて、一般社団法人世界ゆるスポーツ協会代表の澤田様と愛されるシートプロジェクトリーダーの郭が対談しました。

  • ゆるスポーツ:年齢や性別、スポーツの得意不得意、健常者と障がい者にかかわらず、誰もが「ゆるっと」楽しむことができるスポーツのこと
  • 緩急走:世界ゆるスポーツ協会と共同開発した座ったままで楽しめる新しいゆるスポーツ競技。「愛されるシート」をコントローラーとして使い、重心移動により画面の中にいるバーチャルランナーを動かして競争するスポーツ

愛されるシートのコンセプト

郭:

私はシートを永く使ってもらいたいと考えていて、そのためには「あのシートに座りたい」と思われるような「愛される存在」にならないといけない、そういう意味で「愛されるシート」と名付け、このシートシステムを開発しました。愛されるシートは、「楽しむ」を切り口に、「座る」という体験に新しい価値をつけたいと考えました。自動運転の車内で映画が観られたり仕事ができたりといった提案が業界のトレンドですが、「座る」の価値自体は変わっていないと思います。もちろん当社でもそのような研究をしていますが、「座る」意味自体は変わっていません。「座ることを『移動』から『楽しむ』に変えられたら、『座る』の意味を変えられる。それがイノベーションだ!」と社内で話したんですが、当時は「評価が難しい」と冷ややかな反応でした。

澤田:

見方を変えれば最高の褒め言葉ですね。何かを作り出すときに主流からそれることは大事だと思います。今、スポーツ業界で流行っているのは最新テクノロジーを使った観戦拡張などですが、みんなが同じ方向に進んでいる気がしています。ゆるスポーツは、テクノロジーを使うなら新しいスポーツを作る方がいいと思っているので、私たちも業界のトレンドや主流からはそれています。良くも悪くも競合他社同士、イワシの大群で泳いでいると、グーグルやテスラのようなクジラに食べられてしまうかもしれません。今の私たちは、魚の群れからそれた小魚同士が一緒に大海を泳ぎ始めているようなものかもしれませんね。

ゆるスポーツのコンセプト

澤田:

私はスポーツが苦手ですが、2013年の東京オリパラ招致決定を機に、スポーツを楽しめるようなことを考えようと思い「スポーツ弱者を世界からなくす」をコンセプトに、2015年に、「世界ゆるスポーツ協会」を立ち上げました。誰もが楽しむことができる競技を考えるにあたっては、スポーツが苦手な人を設定して、「この人が活躍できるスポーツを作ろう」と開発しています。大事なのが、苦手な人の意見をヒアリングしても、本質にはたどり着けないということです。ヒアリングってなんか身構えちゃうじゃないですか。だから、私たちは、その相手と友達になる。その人に寄り添ってコンテンツ開発をすると、ユニークな課題が抽出されて、ユニークなアウトプット(競技)につながるんです。

郭:

今回の緩急走でいうと、女性3人の車イスチャレンジユニットのBEYOND GIRLSさんは欠かせない存在でしたね。

澤田:

そうです。彼女たちには緩急走をトライアルしてもらい、車イスの彼女たちが活躍できるようにチューニングして、「ゆるスポーツランド2019」で参加者の皆さんに体験していただきました。彼女たちを起点に開発したので、誰もが好成績を収められるようになっています。

「緩急走」共同開発のきっかけ

郭:

愛されるシートの開発をしていた2018年の秋頃、偶然、澤田さんの講演を聞いたことが始まりでした。愛されるシートの普及には自動車業界とは違う新しいコミュニティが必要だと思っていたときで、障がい者目線のファッションショーやプロデュースに取り組まれている澤田さんにとても興味が湧きました。講演後すぐあいさつに行ったのを覚えています。

澤田:

ものすごい熱量で、郭さんが「愛されるシートを使ったスポーツコンテンツを考え始めている」と話しながら紹介動画を見せてくれましたね。「面白い」と思ったので、すぐに話が進み、年明けに「愛されるシート」を体験すると「これは新しい体験だ」と感じました。

郭:

そこから5月の「緩急走」発表までの数カ月間は、それまでぶつかっていた壁を一気に越えた期間でした。ゆるスポや澤田さんのコミュニティと出会って、私たちにはない視点と発想を取り入れることができました。

愛されるシートの今後

郭:

今後は、社会的に意義のあることを増やし、コミュニティが生まれた中で、技術が育つプラットフォームを目指しています。「座るを楽しむ」という概念が広がっていけば、それを使いたい人が増え、必然的にビジネスにつながるはずです。自動車領域にとどまらない、新しいコンテンツを増やしたいですね。

澤田:

コンテンツというものを考えたとき、場所に依存する・しないものに分かれます。忘れがたい体験・経験として、より強く記憶に残るのは場所に依存する方でしょう。そう考えるとシート自体が場所なので、「緩急走」は、より記憶に残る経験になり得るわけです。郭さんは、愛されるシートをどんなところで使ってみたいですか?

郭:

クルマや電車で、みんなが楽しそうに座っていたら面白いだろうなと思います。

澤田:

私はクルマが案外良いんじゃないかと思っています。現在はクルマに乗っていても、それぞれがスマホをいじっていて、人間関係を構築するようなコミュニケーションツールとして、車室空間の価値を最大化できない状態です。例えば、そこに「緩急走」があれば、みんなが同じ方向を見るという価値を得られるかもしれない。イライラする渋滞中なのに車内でみんなが爆笑しているみたいな。

郭:

良いですね。人と人をつなぐ、まさに愛されるシートのビジョンです。

2020年8月、視覚障がいを持つ方でも一緒に楽しめる、愛されるシートを活かしたゆるスポーツ第2弾「ボブイスレー」を発表しました。ご期待ください。

ボブイスレーについて

愛されるシート®

体験すると誰もがきっと“笑顔”になる不思議なシート

長年培ってきた自動車用シート技術とIoTを融合させ、座った人の動きをセンシング。シートをアプリと連動するコントローラーとすることで、新しい楽しみ方を提案するシートシステムです。アプリケーションによって、スポーツやヘルスケア、イベントなど幅広いシーンで活躍します。

世界ゆるスポーツ大会の様子

2019年で4年目を迎える。イベントでは同協会が提供する20以上のゆるスポーツ競技を実際に体験ができる。

世界ゆるスポーツ大会の様子

緩急走(かんきゅうそう)

座った人の動きを検知してバーチャルプレイヤーが連動して走る。身体を動かしてはいけない「緩コース」、むしろ身体を動かさなくてはいけない「急コース」など、「緩急力」が求められるレース。

  • 緩急走画面
  • 緩急走ロゴ
愛されるシート