社外取締役メッセージ

社外取締役メッセージ

2030年ビジョン達成に向け、取締役会の実効性を高めていく

社外取締役メッセージ 荻田 健の写真

2022年6月に取締役会議長を拝命以降、多種多様な経験・知見を持つ取締役会メンバーに恵まれたおかげで、活発な議論を通じた企業価値向上に資する意思決定へとつなげてこられたものと考えています。この社外取締役を議長とする取り組みは2020年から始まっており、翌年には監査等委員会設置会社に移行するとともに、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬委員会を設置するなど、客観性・透明性の高いコーポレート・ガバナンス体制を目指した進化を続けています。併せて、執行へ適正な権限委譲を行っており、取締役会での迅速な意思決定や、議案に応じた議論の深化を図れる体制が整っています。

例えば、取締役会では毎月、連結業績やセグメントごとの報告がなされますが、単に報告を受けて終わりではなく、策定計画からの差異に対する課題や対策への議論が行われ、これからどうすべきか取締役会での意思が示され、執行へとフィードバックされています。同じく、当社では製品品質に関する報告が毎月行われており、拠点ごとの搬入不具合発生状況などが取締役へ共有されています。高品質な製品を供給し続けることは当社の強みであり、生命線です。品質管理は日の目を見づらい業務ですが、我々メーカーにとっては守りの要であり、定例報告を通じて取締役会が常に状況を把握しているというメッセージを現場へ出し続けることは非常に重要であると考えます。このような取締役会の姿勢は、一見マイクロマネジメントとも捉えられかねませんが、一方で「神は細部に宿る」という言葉もあります。事業の肝となる部分に取締役会がしっかり関与していくという姿勢を私は評価しています。

さて、2023年3月をもって第14次中期経営計画が終了しました。この3年間は新型コロナウイルス感染症の拡大や半導体供給不足など前例のない外部環境の変化に大きな影響を受け、当グループの経営は厳しい状況に置かれました。そうした中、グループ内外との連携強化による安定した製品供給、新しい働き方の実践、徹底した原価低減など社員の皆さんの努力により、一定の収益・利益を確保できたことは評価に値すると考えます。また、新事業領域での拡販や次世代車室内空間「XR Cabin」の発表など、将来の事業成長に向けたさまざまな施策が着実に進展しました。ESG領域では、マテリアリティを特定し、中長期目標が掲げられたことは大きな一歩です。さらなる飛躍を遂げるべく策定された第15次中期経営計画には、2030年ビジョン達成を目指した経営陣の強い思いが込められています。計画は実行されてこそ意味があります。取締役会は中期目標必達に向け、進捗を注視し常に最適なかじ取りを行っていきます。

当社の社外取締役に就任して3年が過ぎましたが、当社に対する私の一貫した印象は「技術に根ざした真面目な会社」です。今後、世の中の変化はますます早くなると思いますが、今まで培ってきた技術と文化をしっかり維持しながら、先進技術を世に送り出せるよう、若手社員から経営層まで一丸となって、積極的に挑戦し続けることを期待しています。

多様な人材がイノベーションを生み出す力となる

社外取締役メッセージ 松下 香織の写真

2022年を振り返ると、新型コロナウイルス感染拡大からの市場回復の遅れや半導体供給不足、ウクライナ情勢の影響など、予測不可能な社会情勢に見舞われ、苦戦を強いられた一年でした。その環境下、当グループは「人材重視」「喜ばれる企業」という理念の下、生き残りをかけ、さらなる成長を目指してさまざまな挑戦を進めてきました。

まず「人材重視」の観点ですが、日本では少子高齢化が進み、各企業が人材不足に直面している中で、持続可能な企業であり続けるためには、人材は最も重要な経営資本です。その柱になるのがダイバーシティ&インクルージョン(D&I)であり、重要な鍵となるのは経営陣のコミットメントの強さだと考えています。当グループはD&Iの実現を重要な経営課題に位置付けており、性別・年齢・国籍・宗教・文化・経歴などそれぞれの社員が持つ特性やバックグラウンドを受け入れ、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる企業風土を醸成することを目指しています。それを実現していくために、組織全体の意識改革とマイノリティへの課題に対する具体的な施策の両方を進めています。取り組みの成果が目に見えるまでには時間がかかりますが、着実に目指すべき企業風土が醸成され始めています。目下の課題は、経営層や管理職における女性比率が低いことだと考えています。長年、自動車業界は女性社員比率自体が低い傾向にあり、当社においてもキャリアを積んだ女性社員は男性に比べて少ない状況です。ですが、最前線で活躍している女性社員たちの輝きを見ると、今講じている数々の施策が実を結び、プロパーの女性役員が誕生する日も遠くはないと期待しています。

次に「喜ばれる企業」という点では、自動車産業が大変革期を迎える中、ステークホルダーに喜んでいただける価値を提供していくには、継続的なイノベーションを生み出す力が必要です。当グループは、DXの推進に力を入れ、生産プロセスの自動化やAIを活用したデータ分析など、さまざまな取り組みを積極的に行い、競争力を高めています。加えて、第15次中期経営計画では次世代自動車に向けて、キャビン全体のコーディネート機能を獲得するという成長戦略を掲げ、新技術開発への取り組みを加速させています。技術革新が加速する中、今後も継続的に新たな価値を提供していくには、国内外で通用する優れた技術を持つ企業との戦略的な連携が不可欠であり、いかに将来を見据えた技術提携を結んでいけるかは一つの鍵になってきます。また、若い人材が持ち寄るさまざまなアイデアや活発な議論を大切にしている社風は当社の財産であり、技術提携による他社との交流と、若い世代の育成が相互に作用し合うことで、イノベーションが加速していくことが期待されます。

自動車業界が迎えている大変革期は、市場の勢力図を大きく変えるリスクをはらむ一方、当社にとって大きなチャンスになり得ます。私は社外取締役という立場で、客観的な視点を持って経営議論に参画し、第15次中期経営計画の推進に貢献していく所存です。

経営陣を起点とした意識改革が企業価値向上につながる

社外取締役メッセージ 林 肇の写真

2021年6月、取締役会の任意の諮問機関として、当社に指名・報酬委員会が設置されました。私は当初から委員を務め、2023年6月からは委員長を拝命し、指名・報酬プロセスのガバナンス強化を通じて企業価値を高める委員会運営に努めています。指名・報酬委員会の主な役割は、取締役・執行役員の選解任および報酬に関する事項の取締役会への答申です。客観的で透明性のある判断を行うため、委員会を構成する5名のうち3名は社外取締役が担っており、社外の目を活かした審議が行われています。

選任については、取締役規程に候補者の選任基準が定められており、それに基づいた人選を行います。役員には、組織のリーダーとして必要な先見性、決断力などを有し、当グループの企業理念である「人材重視」「喜ばれる企業」を体現できる明朗闊達な人材を選ぶ必要があります。挙げられた候補者たちにその適性があるのか、社外取締役として公平な視点で審議に臨んでいます。社内候補者については、上程される限られた情報だけではなく、より深く資質や人柄を見られるよう執行と接する時間を増やすなどの取り組みが重要になると考えています。また、次世代を見据えたサクセッションプランも重要な審議事項です。役員には総合的な経営能力が求められますが、激動する自動車業界を勝ち抜くためには、当グループに変革をもたらす尖った人材も必要だと考えます。他の委員や人事部門と連携し、従来の枠にとらわれない視点で後継者を選び育成できるよう知恵を絞っていきます。

現在の役員報酬の構成は、おおよそ基本報酬60%、業績連動報酬25%、株式報酬15%としていますが、経営意識を一層高めていくためには、この割合のままで良いか検討の余地があります。また、業績連動報酬については、サステナビリティへの経営責任と捉え、マテリアリティKPIと連動した指標を検討していくことも必要だと考えます。現状を良しとせず次の一手につなげるべく、指名・報酬委員会をはじめ各会議体で活発な議論を交わしていくことで、さらなる企業価値向上に貢献していきます。

  • 社外取締役および監査等委員である取締役を除く取締役および執行役員の報酬

報酬制度の概要

各報酬は、役位や個別の業績などに応じた報酬テーブルにより報酬額を定めています。
業績連動報酬は、株主の皆さまや従業員との価値共有の観点から、「連結売上収益」および「連結営業利益」の過去3年平均比率、「配当額」および「従業員賞与月数」の前年実績との変動率を連動指標として採用しています。
具体的には、以下の算式により算出した業績連動報酬係数を、役位ごとの報酬テーブルに乗じて報酬額を算出します。
業績連動報酬係数=(連続売上収益過去3期平均比率+連結営業利益過去3期平均比率+配当額変動率+従業員賞与月数変動率)÷4
											※業績指標の勘案割合は、各連動指標均等です。業績連動報酬係数の上限は150%とし、下限は設定しません。
〈参考〉2023年3月期の業績連動報酬係数の実績については、以下の通りです。
  • 連結売上収益過去3期平均比率:132.5%
  • 連結営業利益過去3期平均比率:20.3%
  • 配当額変動率:133.3%
  • 従業員賞与月数変動率:100.0%

確かなガバナンスと働きやすい職場が当社の強みになる

社外取締役メッセージ 中田 朋子の写真

当社は近年、監査等委員会設置会社への移行や社外取締役の増員など、コーポレート・ガバナンス体制の強化を図ってきました。取締役会では、社外取締役である荻田取締役が議長を務め、客観的で独立した立場から的確な議事進行を行っています。また、女性社外取締役である松下取締役は自身の経験およびD&Iやシステム領域の専門家としての観点から、林取締役や私自身は弁護士としての知見を活かした積極的な提言を行っています。以前、新規顧客との取引開始に関する報告を受けた際、私が法的観点からの疑問を投げかけたことをきっかけに、当社は相手方と交渉を重ね、後の取締役会では「ご指摘に沿った対応によって、将来的なリスク低減につなげることができた」と報告を受けました。これはほんの一例であり、当社では社外取締役の意見がしっかりと経営や執行に反映され、社外取締役それぞれが持つ経験や知見が取締役会の実効性向上に寄与していると考えています。

ガバナンス上の課題としては、外国人取締役の登用が挙げられます。登用に向けては検討すべき事項が多く、ともすれば実現までに時間を要することも考えられますが、当グループがグローバル企業として一層の飛躍を遂げるためには、「TSフィロソフィー」を理解し、実践できる外国人取締役を登用することも有意な選択肢の一つとなるはずです。

また、マテリアリティに掲げる「社員一人ひとりが多様性を活かした働きがいのある職場環境の実現」は、これからの企業価値向上に向けた鍵になります。ある若い男性社員は仕事と子育てを両立するため、コアタイムのないフレックスタイム制勤務や有給休暇を十分に活用しており、「こんなに働きやすい会社はありません」と笑顔で断言していました。社内を見渡せば、着実に女性管理職が育ってきていることが見て取れます。これまでの施策を通じ、皆さんがそれぞれの多様性を受け入れ、活き活きと働くための土台が築かれてきたと感じます。今後も多様な人材が管理職として、ひいては役員として活躍できるよう取り組んでいくことを期待しています。

新任のご挨拶

これまで私は、化学・機械系メーカーであるUBEグループ一筋でキャリアを積んできました。テイ・エス テックと同じメーカーならではの考え方と、他業種で培ってきた異なる知見をもって、企業価値向上に資する議論を交わしていくことが私の責務であると考えています。また、財務・法務知識や前職で担った監査役としての知見に基づき、企業経営の健全性や適正性を守る監査等委員の立場で、積極的に提言を行っていく所存です。

コーポレート・ガバナンスを進化させていくことは、あらゆる経営資源を適正に活用し企業価値を向上させていくことと同義であり、それは当グループが掲げる「人材重視」「喜ばれる企業」という企業理念を体現していくことにつながるものと考えています。多様性に満ちた透明性ある経営を実践し、盤石な企業基盤を築いていくための一翼を担えるよう邁進してまいります。

新任のご挨拶 内藤 憲一の写真