社長メッセージ

世界中の全ての
ステークホルダーへ
感動をもたらす
新たな価値を提供し、
ESG経営を“実現”する

代表取締役 社長保田 真成

代表取締役 社長 保田 真成の写真 代表取締役 社長 保田 真成の写真

世界中の全ての
ステークホルダーへ
感動をもたらす
新たな価値を提供し、
ESG経営を“実現”する

代表取締役 社長 保田 真成

第14次中期経営計画の振り返り

第14次中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期、以下「第14次中期」)では、「攻め」の施策である「事業成長に向けた進化」と「守り」の施策である「進化を支える事業体質強化」の2軸から、さらなる事業成長と強靭な企業基盤の構築を目指して諸施策に取り組んできました。2030年ビジョン達成に向けた最初の中期経営計画という重要な位置付けではありましたが、開始当初から猛威を振るった新型コロナウイルス感染症やこれを受けた部品供給不足、エネルギーや資源価格の高騰など、非常に厳しい事業環境に置かれ、収益面では大きな課題を残す結果となりました。

しかしながら、状況に甘んじることなく成長に不可欠な領域へは経営資源を惜しまず投入し、一層の成長に向けた仕込みを行ってきました。新規顧客・新商権の獲得に向けては、欧州自動車メーカーへの拡販のキーステーションとしてポーランドに四輪車用シート生産子会社を新設、営業から生産までを統括する新本部を設置するなどさまざまな取り組みが、現在、着実な商権拡大につながってきています。将来の収益源となる次世代技術領域においては、移動するための空間だった車内を、感動を生み出す次世代車室内空間として形にした「XR Cabin」を発表するなど、当グループがこれからのモビリティ社会で提供していく価値をより具体的に示せたものと考えています。これらと同時に、監査等委員会設置会社への移行や取締役会の多様性向上といったガバナンス改革、優先的に取り組んでいくべき重要課題(マテリアリティ)の特定など、持続可能な成長に向けた事業基盤の強化を図ってきました。

2030年を見据えた第15次中期経営計画

こうした仕込みを成果へと変え、課題である収益性のより早い回復と一層の向上を目指し、私たちは第15次中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期、以下「第15次中期」)を推進しています。計画策定に当たっては、目指すべき一つのゴールである2030年ビジョンの明確化からスタートし、このビジョンを達成するために3年後はどうなっていなければならないのか、また課題である収益性の早期立て直しには何が必要なのかと何度も議論を重ねました。収益性については、単に利益を拡大するだけではなく、資本効率をいかに向上させていくかも重要課題と位置付けました。

これらを解決し、2030年に向けた成長基盤を盤石なものとすべく、第15次中期は経営方針「ESG経営の実現」の下、「成長戦略」「地域戦略」「機能戦略」からなる9つの重点戦略を掲げています。全重点戦略の完遂に向けては新たに「事業戦略会議」を設け、社外取締役を含めた全取締役による推進状況の管理・監督を行っています。徹底した議論と迅速な意思決定をもって、不確実性が高まる事業環境においても着実に諸施策を推進し、一層の事業成長と資本効率の向上を図っていきます。

2030年ビジョンのステートメントと2030年3月期業績目標

第15次中期経営計画

経営
方針
ESG経営の実現

成長
戦略

重点戦略①
キャビンコーディネート
機能の獲得

重点戦略②
新事業のさらなる拡大

重点戦略③
主要客先シェア向上

地域
戦略

重点戦略④
北米収益体質のV字回復

重点戦略⑤
中国事業戦略の再構築

重点戦略⑥
欧州新事業の戦略的拡大

機能
戦略

重点戦略⑦
サプライチェーンの再構築

重点戦略⑧
環境技術開発の推進強化

重点戦略⑨
高効率生産体制の構築

人事 ・ 財務戦略 / 品質No.1評価の獲得 / サステナビリティの浸透・定着

さらなる事業成長と企業価値向上に向けて

第15次中期重点戦略のうち、特に重要となるのが「キャビンコーディネート機能の獲得」「新事業のさらなる拡大」「主要客先シェア向上」の3つの成長戦略です。

「キャビンコーディネート機能の獲得」では、次世代自動車を想定した車室内での過ごし方の研究や異業種・スタートアップ企業との共同開発、内装の複合的な提案を可能とするソフトウェア人材の育成を加速させ、新技術の創出に取り組みます。生み出した技術はいち早く市場へ送り出すべく、お客さまとの先行開発を通じ、量産車への採用を図っていきます。併せて、新たな構造や素材に適応した高効率な量産技術開発に取り組むことで、創出した技術を競争力ある価格で提供できる生産体制を構築します。

新事業のさらなる拡大」では、2030年、連結売上収益の30%を新事業売上とすることを目標に掲げ、営業活動に取り組んでいます。第14次中期では、2022年8月にスズキ株式会社から発売された「スペーシア ベース」に当社のシートが採用されたほか、欧米の四輪・二輪車メーカー各社とも順調にビジネスを拡大することができました。第15次中期ではこの勢いを加速させるべく、お客さまから高く評価を受けた技術を活かし、派生機種の商権獲得を狙っていくほか、新事業統括本部を中心とした各地域・機能本部の連携強化による戦略的な営業活動を展開していきます。

ポーランドの欧州自動車メーカー向けシート生産工場
ポーランドの欧州自動車メーカー向けシート生産工場

この拡販施策と同時に、ホンダグループを対象とした「主要客先シェア向上」にも注力していきます。現在、同グループが販売する四輪車におけるシートの約60%に当社製品が採用されていますが、このシェアを2030年には70%以上に引き上げることを目標に掲げています。その実現のためには、既存商権の確実な受注と新商権による拡販が不可欠です。魅力商品創出による顧客満足度の向上や、開発初期段階からの客先との商品共創、地域・機能本部連携や地域特性を活かした受注活動に取り組んでいきます。また、次世代共通シートフレームなどの開発強化により部品商権の受注を広げ、その後に量産が行われるシート自体の商権獲得を目指すなど、さらなるシェア向上を図っていきます。

その他の重点戦略として地域戦略と機能戦略を設定しています。地域戦略では、北米、中国、欧州における収益性向上に取り組み、企業競争力の強化を図ります。さらに機能戦略として、サプライチェーンの再構築、環境技術開発の推進強化、高効率生産体制の構築など、上位戦略の下支えとなる基盤の強化に取り組み、一層の事業成長を目指していきます。

こうした重点戦略に基づく積極的な成長投資を通じ、課題となっている資本効率の向上にも取り組んでいきます。収益性を高めていくことはもちろんですが、事業規模に合わせた適切なキャッシュ水準へと移行すべく、成長投資のみならず積極的な株主還元をもって資本構成の最適化を図っていきます。第15次中期は、株主還元方針を「業績に左右されない、継続的かつ安定的な還元の実施」と定め、第15次中期末DOE※3.5%以上に向けた安定増配や機動的な自己株式の取得により、3年間で500億円規模の株主還元を計画しています。成長投資による持続的な事業成長と株主還元拡充を通じた資本構成の最適化をもって企業価値向上を図り、PBR1倍以上の早期達成を目指します。

  • DOE(株主資本配当率)=配当総額÷株主資本(親会社の所有者に帰属する持分)

「喜ばれる企業」であり続けるために

昨今、企業による持続可能な社会の実現に向けた社会課題への取り組みが重要視されていますが、私たちは企業理念「人材重視」「喜ばれる企業」を定める「TSフィロソフィー」の下、ずっと昔から社会と共に成長していくための取り組みを重ねてきました。社会課題の解決に資する企業活動を行っていくことが私たちの使命であり、私たちが取り組んでいくマテリアリティには、それぞれSDGsが掲げるゴールを紐づけており、達成に貢献していくための取り組みを加速させています。

特にCO2を直接排出する自動車に関わる企業として、気候変動対応は重要な経営課題の一つと捉えています。カーボンニュートラルの実現に貢献すべく、2050年には事業活動における当グループのCO2排出を実質“0”とすることを目標に、生産・開発を含めた各領域からさまざまな施策に取り組んでいます。また、今後CO2排出量削減をより一層進めていくためには、自社だけでなくサプライチェーン全体での取り組みが必要であり、お取引先のご協力が不可欠です。一方的に削減要請を行うことは簡単ですが、それだけではCO2排出量削減につながらないと考えます。当グループがリーダーシップを発揮し、CO2排出量の算出方法や、削減に向けた具体的手法を発信し、共に取り組んでいくことが肝要であり、お取引先の規模と体力に応じた実効性ある活動となるよう推進していきます。

こうした社会課題への取り組みが単なる企業の「パフォーマンス」になってしまうか否かは、役員をはじめ社員一人ひとりが取り組みの意味を理解し、主体性をもって実行していけるかどうかにかかっています。そして、理解を深めていくための鍵となるのはやはり、当グループの存在価値を表した「TSフィロソフィー」であると考えます。

「TSフィロソフィー」に定められた企業理念の一つである「人材重視」には、会社のために、自分のために、日々一生懸命に努力している社員たちを単なる人材ではなく“人財”として育て、大切にしていくという想いが込められています。もう一つの企業理念である「喜ばれる企業」には、社員を含め、当グループの企業活動に関わりを持つ全てのステークホルダーの皆さんと喜びを分かち合い信頼関係を築き、皆さんから期待され「喜ばれる企業」であり続けるという想いが込められています。当グループは世界で15,000名以上の社員を有していますが、その一人たりとも取り残すことなく、この企業理念を全員が理解し実践していくことこそが当グループを強くすると信じています。社員一人ひとりが「TSフィロソフィー」について真剣に考え、理解し、実践につなげ、その結果として企業成長へとつなげられるよう、私は自らの想いを伝え、挑戦を後押しする環境を作っていきます。個々の力を引き出し、挑戦を促していくための一つの指標として、2022年3月期からエンゲージメント調査を開始しました。本指標はマテリアリティKPIに設定し、2030年「AAA(最高評価)」を目指して各種施策に取り組んでいます。会社と社員の信頼関係を築き、皆がやりがいをもって働くことこそ、当グループの生産性を高め、新たな価値創造に向けた原動力になると考えます。目標達成に向け、一人ひとりの人権を尊重し、人事評価・処遇、福利厚生、社員教育、職場環境など各領域において、個人の特性が発揮され各々が活躍できる環境づくりと、人材育成制度の構築に努めていきます。

社員はもとより全てのステークホルダーの皆さまにとって「喜ばれる企業」であり続け、第15次中期目標や2030年ビジョンの達成のみならず、その先に至るまで社会と共に持続的な成長を果たしていきます。

最後に

不確実性が高まる経営環境の中では、盤石な経営基盤をもってしても事業運営を従来の延長線上にとどめてしまえば現状維持すら危ぶまれ、新たな価値を創造し続けることは到底できないと考えます。前例に固執せず、時に過去を否定し、新たな道を切り開くために必要な経営資源の投入を迅速な意思決定の下で行っていくことが、これからの事業成長には不可欠だと考えます。第15次中期においても変革の手を緩めることなく、より一層ステークホルダーの皆さまから存在を期待され「喜ばれる企業」になるべく邁進してまいりますので、今後ともご支援を賜りますようお願い申し上げます。