特集1:特別対談

一般財団法人 電気安全環境研究所 (JET: Japan Electrical Safety & Environment Technology Laboratories) ISO登録センター 所長 清水 潤一とテイ・エス テック株式会社 専務取締役 管理本部長 中島 義隆の写真

当グループでは、環境問題を経営課題の一つと捉え、継続的な取り組みを実施しています。その一環として、2019年3月には、エネルギーマネジメントシステムISO50001を国内全事業所で認証取得しました。今回は、ISO50001の導入に際し、認証審査を行った一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)ISO登録センター所長の清水氏と、当グループの環境活動における統括責任者である管理本部長の中島が、テイ・エス テックの環境活動について対談しました。

当社の環境活動における進化について

清水:

環境活動に関する認証規格として、従来から取り組まれてきた環境マネジメントシステム ISO14001(2015年版)の目的は、「企業活動によって生じる環境リスクを低減するための活動を継続的に改善する」ことであり、活動のPDCAサイクルを構築・管理していくことに重点が置かれています。一方、今回、認証取得されたエネルギーマネジメントシステムISO50001(2011年版)は、「エネルギー使用量を可視化し、削減に必要な方針・目的・目標を設定し、効率的・計画的に管理する」ものです。現状や改善結果を可視化することで、環境活動を進めるためのポイントが明確になるのではないでしょうか。

中島:

確かに、エネルギー使用量を可視化したことで、精度の高い目標が立てやすくなり、これまで以上に強力な推進ができると考えます。一方で新たな課題も見えてきました。当社では、管理部門が運営事務局として、全社の環境活動とその省エネルギー効果の確認などを取りまとめてきましたが、昨今は、エネルギー管理手法などを含め、専門性の高い領域に及んできています。今後取り組みを進化させていく上では、施設や設備を直接管理する部門が中心となって取り組む必要があると考えています。また、環境活動は継続性が必要であり、事業活動と同じく中長期的な目標設定と戦略を持って、効率的な運用や設備等の投資を行っていくことが重要です。その積み重ねがあって、 “当たり前のこと”として活動が持続できると考えています。

清水:

仰る通り、環境活動を何か“特別なこと”という風に捉えるのではなく、“当たり前のこと”という意識が社内で根付けば、活動の裾野が広がっていくと思います。

テイ・エス テックの環境活動について

中島:

当社の環境活動では、エネルギー削減率を目標にしていますが、長年続けてきた自助努力による削減活動はひと通り手を尽くしています。今後は、当グループに部品を供給してくださるお取引先とも連携した環境活動に進化させていきたいと考えていますが、活動の範囲が広がれば、さらなる管理コストやリソースも必要になるため、関係部門と協力しつつ、戦略的に進めたいですね。現在、中長期的な環境課題への具体的目標を定めた環境ビジョンを策定中です。この目標を達成するには、認証取得で得られた見地を有用なツールとして、日本やグループ内に収まらず、サプライチェーン全体に効果を波及させていかなければなりません。もはや環境活動は単なる現状の改善ではなく、組織を改革するのと同じではないでしょうか。そこには社員一人ひとりが自分の役割をきちんと認識することも必要です。全員を巻き込んで推進するのは非常に勇気のいることですが、これからは必要ですよね。継続的な改善は当たり前としても、改善のもっと先の、いわゆる「環境改革」っていうところまで意識を変えていかなければならないと思います。私たちモノづくりに携わる者としては、研究開発から材料調達、生産に至るまで、全ての段階で進化していく必要があると感じます。環境にやさしい素材開発や軽量化、生産効率アップによるエネルギー消費の低減など多面的な環境活動を行っていきたいものです。もちろん自社のリソースに固執せず、オープンイノベーションなども取り入れつつ、柔軟な形で育っていけたら良いなと思います。

清水 潤一様の写真
清水:

長年にわたって取り組まれていることは率直に素晴らしいと感じました。いち早くエネルギー管理に着手されたことも先進的と評価できます。ただ、エネルギーマネジメントシステムは緒についたばかりですので、現場まで浸透させるには時間がかかります。認証取得後のこれからが正念場だと思いますので、引き続き尽力していただきたいと思います。
“改善”を超えた“改革”が必要という視点には共感します。民間企業において、事業軸と並行してそのような社会的対応力を磨くことは大変ですが、ぜひISOを役立てていただきたいですね。

当社のISO監査に携わったご感想

清水:

貴社の監査では、担当者から経営層までヒアリングさせていただきましたが、皆さん、非常に意欲的な印象を受けました。それぞれに役割や携わり方が異なっていても、より良い活動にしたいという意志を根幹で共有されていることが素晴らしいと感じました。同時に、印象的だったのが、全社のマネジメントシステムを敷きながら各事業所の独自性を大切にされている点でした。ISOは標準規格ですから、画一的な管理方法があり、それを全社に落とし込むことを推奨していると思われがちですが、会社はさまざまな部門の集合体であるがため、当然、各々の事業所別に独自性というものは存在します。各事業所が特有の設備や根差した文化を重んじつつ、ISO取得という共通の目標に向けて独自で対応策を見出している姿が見受けられ、それが個々の皆さんの活力になっているようにも見えました。標準化というものを押し付けず、かといって連帯感を失わないように手綱を引くのは非常に難しいと思います。そこをうまくマネジメントされているなと。

中島:

事務局含め各事業所はよくやってくれており、感謝しています。一概に当社の工場といっても、シートは非常に複雑な構造をしていて部品点数が多く、扱っている車種が異なれば使用する材料や製法も異なるわけですから、全ての事業所を同じように管理することにそもそも無理があります。事業所ごとに個性が光る取り組みを進めれば面白いと思いますね。しかし、やはりグローバルで見るとまだまだ温度差を感じます。ISO50001は今後、日本で確立した管理手法を海外グループ会社においても展開予定ですが、本当にわれわれと同じ意志を持てるのかなと。まだまだ自律的に動けないところもありますから、軌道に乗るまでは、やはりマザーである日本が引っ張っていかなくてはと思いますね。管理手法を展開するだけでなく、たとえ時間がかかっても、各国、各拠点の社員一人ひとりまで、環境への想いをしっかり共有していきます。

中島 義隆の写真
清水:

そうですね。時間を要するかと思いますが、まずは始めたものをしっかり定着させることが大切です。そうすれば、おのずと成果も上がってくるように思います。現時点でISO50001を取得している日本企業はそう多くありません。貴社の取り組みが成功することによって、今後日本での認証取得が広がっていくことに期待しています。

清水 潤一様と中島 義隆の写真