取締役監査等委員 座談会

取締役監査等委員

多様な知見を取り入れESG経営による企業進化を目指す

テイ・エス テックでは、2021年6月から監査等委員会設置会社へ移行すると同時に任意の指名・報酬委員会を設置し、これまで以上に社外取締役の独立した意見を経営に反映できる体制を整えています。新たに監査等委員を務める4名の取締役に、より透明性・公平性の高い企業経営を目指して構築された新たなコーポレート・ガバナンス体制や今後に向けた抱負を語ってもらいました。

取締役 監査等委員 関根 健夫の写真

取締役 監査等委員関根 健夫

1982年4月
当社入社
2004年4月
当社事業管理本部経理部長
2010年4月
当社執行役員業務監理本部副本部長
2011年4月
当社執行役員事業管理本部副本部長
2017年4月
当社常務執行役員経営企画室長
2020年4月
当社常務執行役員
2020年6月
当社監査役
2021年6月
当社取締役(監査等委員)(現任)
取締役 監査等委員 元田 達弥の写真(社外取締役)

取締役 監査等委員元田 達弥
(社外取締役)

1993年5月
アンダーセンコンサルティング(現 アクセンチュア株式会社)入社
1999年9月
公認会計士 辻会計事務所(現 辻・本郷税理士法人)入所
2007年4月
同事務所国際税務部門統括部長
2008年10月
税理士登録
2014年4月
元田会計事務所所長(現任)
2014年6月
当社監査役
2018年7月
株式会社グローバルインフォメーション社外監査役(現任)
2021年6月
当社取締役(監査等委員)(現任)
取締役 監査等委員 林 肇の写真(社外取締役)

取締役 監査等委員林 肇
(社外取締役)

1983年4月
三重労務管理センター入社
1986年4月
弁護士登録
大脇・鷲見合同法律事務所入所
1989年4月
明和綜合法律事務所入所
1996年5月
さざんか法律事務所所長(現任)
2020年6月
当社監査役
2021年6月
当社取締役(監査等委員)(現任)
取締役 監査等委員 中田 朋子 の写真(社外取締役)

取締役 監査等委員中田 朋子
(社外取締役)

1997年4月
判事補(東京地方裁判所)任官
2000年6月
弁護士登録(第二東京弁護士会所属)
2002年8月
ニューヨーク州弁護士登録
2015年3月
The American College of Trust and Estate Counsel International Fellow 就任(現任)
2017年4月
The International Academy of Estate and Trust Law Academician 就任(現任)
2020年12月
東京ヘリテージ法律事務所所長(現任)
2021年6月
当社取締役(監査等委員)(現任)

取締役会への評価

関根:

当社の取締役会は、より実効性の高い機関に向けた進化の途上にあります。2021年3月期から社外取締役が議長を務めるようになり、より客観性の高い議事進行の下、今までに増して活発な議論が行われるようになりました。

また、報告や議論の内容が、より高次元な経営判断に関わるものに変わってきています。業務執行に関する意思決定などについて、今回の監査等委員会設置会社への移行を機に、取締役会から取締役への権限委譲を進めたことにより取締役会の質を高める効果として表れていると感じています。

元田:

今回、監査等委員会設置会社に移行したことにより、社外取締役の割合がさらに高まりましたが、ただ人数を増加させるだけでなく、社外取締役一人ひとりが参加しやすい取締役会運営が行われていると感じています。取締役会での報告事項、決議事項については、常に詳細な資料が提供され、加えて社外の人間にとって理解しにくい専門用語に関しては丁寧な補足説明を受けることができます。

林:

私も元田取締役と同じように、各議案に関する事前説明の充実を高く評価しています。取締役会の前に監査等委員会が開催され、各議案について詳しい説明が受けられるため、余裕を持って取締役会の下準備を行うことができます。

また私は当社の取締役会に関して、大いに感心していることがあります。それは、一つひとつの議案の内容が、要点をうまく絞り込んだものとなっている点です。いずれの議案の中身を見ても、取締役会に上程される前に十分な議論を経て作られていることが分かります。この無駄の無さが、取締役会の効率的かつ有意義な運営につながっていると考えています。

中田:

私は新任されたばかりのため、まだ数回しか出席していませんが、最初は社内外を問わず皆さんが積極的に発言されている姿に驚きました。毎回、非常に活発な議論が行われていると感じています。

また報告を行う社員の皆さんが緻密な資料を使って無駄なくテキパキお話をされる姿に、とても優秀な方々がしっかりと実務を支えている会社なのだという印象を受けています。

新たなコーポレート・ガバナンス体制

関根:

当社は2021年6月から、監査等委員会に加え、任意の指名・報酬委員会を設置し、社外取締役の独立した視点からの意見を適切に経営へ反映することで、透明性や公平性を高めていこうとしています。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行した一番の目的は、やはり監督機能のさらなる強化です。取締役の職務執行に関する監査と監査報告の作成などの基本的な職務内容は、従来の監査役によるものと大きくは変わりませんが、監査方法は大きく変わります。監査役は独任制の下、会社の事業報告や業務・財産の状況調査権を有した個々が、監査を実施することが前提でした。一方、監査等委員会は、内部監査部門や内部統制を所管する部門との連携を通して監査を行う組織監査が前提となります。当社では効率的にかつ実効性のある組織監査を推進するため、業務監査部を監査等委員会の直接管理下に置くなど、指揮命令系統を強化する施策を行っています。

元田:

私が委員長を務める指名・報酬委員会は、取締役会の諮問機関として、取締役会からの諮問に基づいて取締役や執行役員の選任・解任、報酬などに関する事項について取締役会に答申します。当然ながら、当社の取締役や執行役員の候補者の選定、役員の報酬の決定は、従来から一定の基準に基づいて行われています。しかし、トップマネジメントを中心に審議されていたため、外部からは見えにくい部分があったと思います。今後は、社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会により、グローバル企業に要求される客観性や透明性、公平性を持ったシステムを運用していくことで、当社のコーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることにつながっていくと考えています。

関根:

監査等委員会も指名・報酬委員会も、今まではなかった組織ですから、期待される監査機能・モニタリング機能を発揮していくためには、さまざまな課題をクリアしながら前進していかなくてはなりません。監査等委員会については、常勤監査等委員が私一人ですから、直接監査(子会社への往査)を効果的に実施するため、今回の機関設計変更により直轄となった業務監査部や海外の業務監査部門との連携による監査業務を確立するという課題があります。一方、指名・報酬委員会では取締役の選任や報酬に対する意見の決定プロセス、意見陳述権の行使などについて、最適な方法を確立していくことが求められます。

取締役会とダイバーシティ

関根:

取締役会のダイバーシティがもたらす価値の一つは、固定観念にとらわれない判断力です。当社の中だけでキャリアを積んできた社内取締役は、過去からの事業の経緯、あるいは企業文化への理解があるが故に、取締役会での提案に対して、批判的な視点を持ちにくい傾向があります。独立した立場から発言ができる社外取締役の存在によって取締役会のダイバーシティが高まることにより、意思決定に当たっての議論がより客観的で創造的なものになると思います。

元田:

そうですね。当グループは2030年ビジョンの達成目標である「世界で信頼されるシート・内装システムサプライヤー」に向け飛躍しようとしています。そのためには新たな価値観が原動力となることが期待されます。しかしながら、海外のグループ会社を見ると、その経営層は日本からの赴任者がほとんどです。将来的には「現地の人材が現地のグループ会社の取締役や執行役員を務める」という姿を目指すべきです。当社だけにとどまらず、グループ全体での取り組みが必要ですね。

当社で言えば、2021年6月から中田取締役が初の女性社外取締役として経営に参画され、取締役会のダイバーシティがさらに高まりました。将来は、社内で活躍されたより多くの女性社員が、役員として当グループを成長へと導いてくれることを期待しています。

中田:

女性の場合、どうしても出産や子育てに時間を取られてしまうため、仕事から距離を取らざるをえない時期があります。そこで大切になるのが、子育てをする女性社員を支える環境づくりです。トップマネジメントから、育児休業や短時間勤務制度といった社内制度の拡充など、性別に関わらず誰もが働きやすい環境づくりへ積極的に取り組むという方針を伺っています。この当社の方針には大いに賛成しています。

林:

女性活躍推進の取り組みにより、中田取締役に続く女性取締役が誕生するといいですね。ただし、企業に求められるダイバーシティは、性別・国籍・年齢などだけではありません。取締役会には、これからは特に経営経験のダイバーシティが重要となります。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでも、「取締役会の機能発揮」の項目で「他社での経営経験を有する経営人材の独立社外取締役への選任」が提唱されています。すでに当社には他分野の製造業での経営経験をお持ちの社外取締役がいらっしゃいますが、将来的にはもっと幅広い業界の経営経験者に加わっていただくことも考えられます。

さらなる企業価値の向上へ

関根:

当グループでは、第13次中期経営計画(2018年3月期~2020年3月期)は「ESG経営の基盤構築」、第14次中期経営計画(2021年3月期~2023年3月期)は「ESG経営による企業進化」を経営方針に掲げて、さまざまな施策を推進してきました。この間、企業のサステナビリティを測るベンチマークの国際基準「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インデックス(DJSI)」を指標に、ESG経営の強化に取り組んできましたが、Gにあたる「ガバナンス」を支える当社の機関設計自体は大きな変更を行ってきませんでした。しかし現在、コーポレートガバナンス・コードの改定や東証の株式市場の再編(プライム市場への移行)といった動きに見られるように、透明性、公平性の高いコーポレート・ガバナンス体制がより強く求められるようになってきています。

今回、監査等委員会設置会社への移行と任意の指名・報酬委員会の設置を行いましたが、これからが「ESG経営による企業進化」の真価が問われるときです。機関設計を変更したことに満足せず、社会軸や環境軸に関しての取り組みを進め、ESG経営による企業価値向上を図っていく必要があります。

元田:

そうですね。ESG経営は、株式価値をはじめとする企業価値の向上につながるものです。ESGのうち、ますます重要になると考えられるのがEにあたる「環境」です。近年、地球温暖化による気候変動が原因と思われる自然災害が増大し、各国の政府も産業界に対して環境保全のためのさまざまな規制を厳格化しています。当グループでも、グローバル企業として、また自動車産業に関わる製造業として、環境保全への取り組みをさらに加速していく必要があります。環境負荷の低い原材料の使用、CO2排出を抑制する製造方法の確立、再生可能エネルギーの利用拡大など、地球環境への負荷が少ない事業活動の実現に向けた積極的な投資が求められます。

林:

私も「環境」の重要性について、同じ認識を持っています。ただし、法務やコンプライアンスを専門領域とする者としては、環境や自然と同じように「人間」もまた大切にしなくてはならないと強く考えています。SDGsでは一つ目の目標として「貧困をなくそう」を掲げています。これは「人間」を大事にすることに通じるテーマです。多くの国々でビジネスを展開する当グループでは、貧困に象徴される、全世界の人間に関わる課題を強く意識して事業を進めていくべきです。範囲をグループ内にとどめることなく、サプライチェーン全体を考え、当グループが成すべきことに一つひとつ取り組んでいくことが企業価値向上につながっていくと考えています。

監査等委員としての抱負

林:

監査役から取締役になったことで、取締役会で議決権を有する、いわゆる「経営陣」となったことに身が引き締まる思いです。

当グループでは「ESG経営による企業進化」を経営方針に、“攻め”の施策である「事業成長に向けた進化」、“守り”の施策である「進化を支える事業体質強化」を企業重点施策に掲げています。法務領域を専門とする私は“守り”を担う者として、一つひとつ真摯に当グループの成長に向けて取り組み、“守り”の観点から取締役会で議決権を行使していくことで役割を果たしていきます。

中田:

社外取締役を務めるのは、私にとって初めての経験となります。「自社の経営陣に女性がいるだけで、女性の社員にとってはとても励みになる」という話を聞いたことがありますが、皆さんをしっかりと鼓舞できるよう臨んでいきます。

また、私に期待されている領域は、弁護士としての法律的な見地からの提言、あるいは海外経験を活かしたグローバルな視点や女性視点からの意見であると認識しています。他の取締役の皆さんが気づかないアイデアを提供することで、当社の発展に貢献していきます。

元田:

私は指名・報酬委員会の委員長として、新たに設置された同委員会を形骸化させることなく、実効性の高い組織として運営していくことを目標としていきます。

私たちのような非常勤の社外取締役が、新たな取締役、執行役員の選任に際し、限られた資料や面談だけを頼りに正しい評価を下すことは非常に難しいことだと考えています。だからこそ、常勤の取締役や執行役員の皆さんとしっかりと連携することで、当社の次代を担う人材の人間性や資質を確実に見極めていけるよう努めます。

関根:

今回、監査役から監査等委員となったことで、私に要求される監査業務がより深化しました。従来は取締役の職務執行が法令や定款に準拠しているか否かを監査する適法性監査が中心でしたが、これからは業務執行の判断過程や意思決定内容が合理的であるかといった妥当性監査も担うことになります。

さらに取締役会の議決権を持つ取締役として、業務執行の決定に関与することになりますので新たな責務に臨んでいきます。

また、常勤監査等委員として、社外取締役の監査等委員の皆さんに十分な情報を提供し、力を合わせ、テイ・エス テックの持続的な成長を支える監督機能を担っていきます。