2024年03月18日
新機種紹介
初の自社開発ECUを搭載
さらなる快適性を実現
Honda CR-V
世界中の方々に、シートでこれまで以上の快適を感じてもらえるよう、挑戦し続けたプロジェクトメンバーにお話を伺いました。
Profile
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岡部 雅宏
機種LPL室
LPL(ラージ プロジェクト リーダー)
1986年入社。品質管理部に配属。2003年よりアメリカに駐在。日本に帰任後、機種LPL室に所属。今回のプロジェクトではLPLとして、機種開発総括責任者を務めた。
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星 祐一郎
電装開発部
2006年入社。電装開発部に配属後、電装部品の開発・試験を担当。今回のプロジェクトでは電装部品開発領域を取りまとめるPL(プロジェクトリーダー)を務めた。
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赤井 恒太
設計部
2012年入社。設計部に配属後、四輪車用シートの設計を担当。今回のプロジェクトでは設計領域を取りまとめるPLを務めた。
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伊波 悠太
電装開発部
2012年入社。電装開発部に配属後、システム開発関係を担当。今回のプロジェクトでは、シートヒーターのECU開発領域に携わった。
星新型CR-V用シートでは、電装部品領域において「シートヒーターの暖まるスピード世界TOPクラス=『速暖』」を目標に開発を進めました。同車は、寒い地域で選ばれることも多く、シートが早く暖まることが喜ばれます。単純に、電力をたくさん使えば暖まるスピードは向上します。ただ、リスクも増えますし、今後の電気自動車等の時代を見据えると、シートヒーターがこれまで以上に電力を使うことは極力避けるべきだと言われています。そのため、“効率 良く”暖まるスピードをアップさせる方法を模索しました。
そのひとつが、“ヒーター線の配置見直し”です。
これまでは、座面全体を暖める配置でしたが(図1)、いかに効率良く乗っている人に暖かさを感じてもらえるか、ということを考え、太ももの裏など“人が温かさを感じやすく、かつ多くの面積に触れるところ”を狙ってヒーター線を集中的に配置(図2)することで、『速暖』を実現し、快適性能を向上させることができました。
伊波ヒーター線配置の変更に合わせて、当社開発のECUをお客さま(Honda)に提案しました。ECUとは、そのときのヒーター線の温度状態を読み取り、ヒーター線に送る電力量を制御する部品です。今回のシートヒーターシステムでは、必要最低限の消費電力で素早く狙った座面温度になるよう制御するECUを開発しました。
当然ですが、開発にあたっては、お客さまから提示される要件を守らなければなりません。自社開発のECUが搭載されるのは初めてで、最初は何から手をつければよいのかわからず苦労しましたが、これまでにない『速暖』性能をもったシートヒーターシステムの実現を目指し、高いモチベーションを持って取り組むことができました。仲間からの協力が得られたこと、またシート開発を長年行なってきた当社だからこそ、省電力の『速暖』シートヒーターシステムができたのだと感じています。
※1 ECU:Electronic Control Unitの略。システムを電子回路で制御する装置のこと。
赤井旧モデルのリアシートは、レバーを引くワンアクションで、シートの座面とクッションが前方に跳ね上がり、そこに背もたれが倒れこむ方法を採用しており、お客さまからも高い評価をいただいていました。
新型では荷室を“さらに広く”というお客さまのニーズに応えるため、ダイブダウン※3する方法に変更しました。旧モデルよりもシンプルな機構にしたことと、安全性や乗り心地など旧モデルの性能を維持しつつシートを薄くしたことで、20%以上の軽量化につながっています。“重さ”は燃費性能に直結することから、自動車の魅力向上という面で、お客さまの関心が高いところです。今回は、そういった観点でも貢献することができてよかったです。
※3 ダイブダウン:シートの背もたれを前方に倒した際に、連動して座面が沈み込む機構のこと。(図3参照)
プロジェクトを終えて
日本で見かけることは少ないかもしれませんが、CR-Vは世界各地で根強い人気を誇っています。海外での販売台数が多く、テイ・エス テックにとっても重要な機種のひとつです。モデルチェンジに寄せる期待も高く、より便利で、より快適な車内空間の実現に向けて、お客さまからの、荷室を“さらに広く”という要望に応えることはもちろん、寒冷時の快適性を向上する“速暖”ヒーター用ECUを積極的に提案してきました。
ECUの自社開発は初の試みでもあり、とても苦労しましたが、でき上がった“速暖”ヒーターシステムは、早く暖まるだけでなく、燃費にも貢献する優れた性能を有する製品になりました。今後、より多くの機種に採用されることで、世界中のユーザーの皆さまに、この性能を実感いただけると嬉しいですね。