2024年03月18日
新機種紹介
ワンランク上の
「安心」と「上質感」をカタチに
Honda GRACE
Hondaセダンの新たな顔として登場した「GRACE」の、シート(座席)とドアトリム(ドアの内張り)の開発について、プロジェクトメンバーにお話を伺いました。
Profile
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島野 敏之
機種LPL室
LPL(ラージ プロジェクト リーダー)
1979年入社。ハンドルの生産工場に配属。
その後、技術部門で、ハンドルや内装の開発を担当。その後、生産技術部門を経て、タイに駐在。帰国後、2013年に機種LPL室に異動し、LPLとして担当機種の立上げを取りまとめている。 -
荻野 大祐
設計部
2006年入社。設計部門に配属後、シートの設計を担当。その後、デバイス(機構)関連の設計を経て、現在は、シートの設計を再度担当している。
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久保 尚己
設計部
2007年入社。設計部門に配属後、ルーフの設計を担当。現在は、ドアトリムなど内装の設計を担当している。
島野「GRACE」では、当初より戦略的に定められたフレーム(骨組み)で開発展開することが条件でした。でも、そのフレームをそのまま流用できるかというと、そうではないんですね。セダン系の「GRACE」とハッチバック系の「フィット」では、シートの高さや角度も異なるため頸部性能(首部分の衝突時の安全性)が変わってきてしまいます。今回の「GRACE」は、「フィット」に比べてシート位置が低く、クッションの座面角度が起きているため、衝突時に人がシートに入りこみにくくなり、ヘッドレスト(頭を支える部分)と頭部の距離が遠くなります。つまり頸部性能という面で不利になります。
荻野頸部性能は、衝突した時にいかに早く頭部をシートで受け止められるかが大切です。そのため、通常はシートのフレーム自体を変えるのですが、今回は変更できる部品が限られていました。そこで私たちはヘッドレストの仕様を見直したんです。
島野ヘッドレストの形・厚みを変えて、後面追突時における頸部への傷害値を軽減しやすくしました。試験部門と連携して、フレームの代わりにヘッドレスト形状や背もたれのウレタン硬度などいろんなアイデアを出し合って工夫したんです。シミュレーションを含めたテストは何度も繰り返していただきましたね。
島野ドアトリムにも、様々な工夫をしています。ドアを開けた時に目を引く、大きく貼られた表皮。これは表側から貼り込んでいます。ドアトリムには布の部分と樹脂の部分がありますが、普通、異なる2つの部分を合わせる場合は、別々に作って、布を巻いた樹脂をはめ込むのが一般的です。しかしこの機種は、表皮を製品上面から貼り込む「木目込み(きめこみ)」技術を採用しています。「木目込み」とは、溝に表皮を押し込む技術で、日本の伝統工芸品のひとつである「木目込人形」をつくる技法から、このような言い方をしています。この技術によって部品点数を減らしながらも、上質感を実現しています。
久保もうひとつの特長は、プルポケット(開閉時に手をかける箇所)に施したヒンジ構造です。ドアをつかんだ時のグリップ感も大切にしたくて取り入れたのですが、金型で成形する際のレイアウトが難しくて…
過去機種でも同構造の物を手掛けていたので、さらに良くしたいと言うプレッシャーを感じていましたが、とても良い仕上がりになったと思います。
島野インナーハンドル(車室側ドアノブ)前方にツイーター(高音域スピーカー)があり、リング状の塗装を施していますが、当初は、太い幅で塗装していました。しかし、「細くした方がよりカッコいい」ということから、量産も間近に控えている頃ではありましたが、急遽改善を図ることにしました。
久保細く塗装するには、高度なマスキング技術が必要になりますが、別の部品に変えるとなると他への影響がとても大きいため、今回は塗装業者とやり取りを繰り返し、レベルの高いマスキング技術を構築しました。ようやく完成した時は嬉しかったですね。
島野なかなか気づかれにくい部分ですが、細部までクオリティを追求する精神で造り上げた結果、上質なドアに仕上がりました。