トップメッセージ

2018年12月に設立58年を迎えるテイ・エス テックグループは、100年企業としての姿を見据えることができるステージに入ってきました。100年続く企業となるためにまずは、ESG経営の基盤を固め、グループ全体のサステナビリティを盤石なものにしていかなくてはなりません。これまで以上にテイ・エス テックの企業価値を高めて、未来へと引き継いでいくために、不断の努力を重ねていきます。

就任にあたっての抱負と経営方針

2018年6月に代表取締役社長に就任し、会長の井上満夫と共にテイ・エス テックの舵取りを担うこととなりました保田真成です。経営の最高責任者を会長が、業務執行に関する判断および決裁については社長である私が務める体制により、強固なガバナンスをベースとした速やかな判断でグローバル展開と事業成長を進め、さらなる企業価値向上を目指して全身全霊を尽くしていく所存です。

経営の基本方針としては、まず、2018年3月期よりスタートしている第13次中期経営計画を基に、変化の激しい情勢を見極めつつ、常に最良の施策を打ち出し推進していきます。そして企業理念「人材重視」「喜ばれる企業」の下、2030年に向けて「存在を期待される企業」の実現を目指し、ESGの観点を取り入れた経営で持続可能な社会への貢献に取り組み続けます。

経営において大切にしている考え方

テイ・エス テックグループのようにモノづくりを行う企業においては、「品質」が何より重要だと考えています。品質を向上させることは、結果的にコスト低減にもつながります。そして、高品質な製品を提供することで、お客さまの信頼を獲得し、次の受注にもつながります。

そこで、当グループでは、品質向上につながる設備を積極的に導入しています。例えば、不良品の予防という点からは、溶接の正確性や、シート部品の適正組み付けなど、人の目によるチェックはもちろん、カメラと画像識別システムを導入して、不良品の流出防止に努めています。さらに、トレーサビリティシステムでは、シート一脚ずつ管理タグが貼られており、工程ごとの情報を記録しています。タグにはそのシートが「いつ(何時何分何秒)」「どこで(生産ライン)」「誰が(担当作業者)」「何を(作業内容や検査結果など)」行ったかがすべて記録されており、どのくらいのトルク(力の強さ)でボルトが締められたかなども把握できます。これにより、万が一リコールなどが発生した場合でも、特定する範囲を絞り込め、対策までの時間が短縮できます。

また、常に高い品質を維持し続けるために、“現場”で“現物”を実際に確認し、“現実”を認識したうえで問題解決を図る「三現主義」を重視しています。製造業において当たり前のことかもしれませんが、特に私は重要視しており、各グループ会社の経営トップには、1日数回“現場”に足を運ぶよう指導しています。トップ自らが、すみずみに目を配り、“現場”の声に耳を傾けることで、“現実”が分かり品質問題の芽を早期に発見することが可能となります。さらに、経営・管理層と現場との距離が縮まることで、品質改善に対する社員の意識の変化にもつながります。私も、生産・開発現場をよく回っていますが、そうするとおのずと3S(整理・整頓・清潔)も行き届きます。やはり汚い現場からは良い製品は生まれません。

モノづくりの根幹となる部分を疎かにしないことで、企業体質を向上させて、グループ全体の競争力を高めていきたいと考えています。

2018年3月期の総括と2019年3月期について

2018年3月期は、各国の経済動向が好調に推移し、主要客先からの受注台数の増加や上位グレード機種の構成比が高まったことによる、いわゆる機種構成の良化に加え、円安による為替換算効果、これまで進めてきた生産の高効率化などの収益体質向上施策が功を奏し、売上収益は4,794億90百万円と前連結会計年度に比べ536億96百万円(12.6%)の増収となりました。利益面においても、営業利益は473億46百万円と前連結会計年度に比べ127億88百万円(37.0%)の増益となり、当初予想を上回り過去最高益を達成することができました。

当グループは現在、第13次中期経営計画を進めており、その初年度となった2018年3月期は、「ESG経営※1の基盤構築」に向けて3つの主要施策「継続的な事業成長」「ダイバーシティマネジメントの実践」「社会環境との共生」に取り組んできました。

「継続的な事業成長」では、「世界No.1品質体質の実現」「部品競争力世界TOPの実現」「他販※2事業の拡大」を掲げて収益体質の強化を進めてきました。

「世界No.1品質体質の実現」については、日々の取り組みが多くのエンドユーザーさまに認められ、米国の権威ある調査会社による「品質および満足度調査」の4部門で当社のシートが上位にランクインしました。また、同社の「自動車商品魅力度調査」では、トップ評価を得た2機種に当社製品が採用されており、それぞれシート評価項目すべてにおいてNo.1評価を獲得しました。

「部品競争力世界TOPの実現」では、2018年3月期に生産が開始されたホンダ ACCORD用シートに当社の誇るグローバルスタンダードフレームや電装技術が多数採用され、コスト上昇を抑えつつクラストップの快適性を実現し、付加価値の高い競争力ある製品を世に送り出すことができました。

「他販事業の拡大」においては、お客さまとの秘密保持契約によって具体的なメーカー名はお伝えできませんが、小規模ながら各地域で複数の新規受注を獲得でき、これまでの活動の成果も徐々に見え始めています。また、米国ビッグスリー、中国ローカルメーカーをターゲットとした営業拠点を新設し、新規顧客・受注獲得に向けた施策に取り組みました。
また、「ダイバーシティマネジメントの実践」では、日本においてコアタイムのないフレックス勤務制度の導入を完了するなど、各国の地域性に即して、社員一人一人の特性に合った「働き方改革」を推進し、労働生産性を向上させています。

そして、「社会環境との共生」については、約半世紀にわたり、当グループの成長を支えてきた本社建屋の建て替えに際して、老朽化、耐震性、環境対応といった時流に伴うさまざまな課題を解決するとともに、将来へのさらなる飛躍に向けた施策を織り込みました。「高効率化」と「上質なホスピタリティ」をコンセプトに、省エネルギー化はもちろん、常設カフェテリアは障がい者就労の場として活用することで、ダイバーシティにもつながっております。この他にも、地域社会との良好な関係を維持すべく、各地域に密着した社会貢献や環境保全活動に取り組みました。

2019年3月期は、引き続き第13次中期経営計画に沿って各領域の施策を着実に進め、目標必達に向けて邁進していきます。
具体的な内容としては、各地域において自動化による高効率化やグローバルでの部品補完体制の強化を推し進め、より外部環境の変化に強い体質構築を目指します。また、欧州地域で予定されている新たに受注した他販案件の確実な立ち上げで、お客さまの信頼を獲得し、「他販事業の拡大」を加速させていきます。

また、ESGへの取り組みは、外部から適正に評価してもらうことで、グローバル企業としての地位確立につながるものと考えており、今後、第三者機関からの評価を受けることを前提に、まず2018年3月期にはしかるべき指標に基づき社内で自主評価を実施しました。これにより特定したESGの重要課題に関してグループ全体で取り組んでいきます。

※1 ESG経営:「環境(Environment)」「社会(Social)」「企業統治(Governance)」を十分に配慮した「ESG」観点での経営
※2 他販:主要客先以外の完成車メーカーへの販売

テイ・エス テックの目指す価値創造

グローバルで情勢が目まぐるしく変化し、将来に向けて厳しい事業環境が予想される中、利益の追求はもとより、社会課題への対応といった多くのステークホルダーの期待にしっかりと応え、持続可能な社会に貢献することが、さらなる成長につながります。そして、企業理念である存在を期待され「喜ばれる企業」の実践にもつながると考え、「ESG経営の基盤構築」を中期経営計画に掲げて取り組んでいます。「ESG」といっても、全く新しいこととは捉えておらず、社会課題に対応する技術開発など、これまでのテイ・エス テックの事業活動の延長線上であり、当社らしさのある価値の創造につながっていくと考えています。

当グループは、「安全技術」「環境技術」「魅力商品技術」を軸に研究開発に取り組んでいます。

まず、「安全技術」について、自動車業界において重要な社会課題である交通事故へのアプローチは、早くから取り組んでおり、世界に先駆けて高性能ダイナミック試験機を導入し、その試験から得たデータ・ノウハウを活かして設計された当社シートは世界トップクラスの安全性を確保しており、当社の強みの一つとなっています。

次に、「環境技術」について、燃費向上や資源節約にも貢献する軽量化への取り組みは、シートフレーム(骨格)の軽量化追求や軽量かつ高性能な新表皮素材の開発など日々進化させています。

また、「魅力技術」は、快適性から始まり、シートアレンジ、センシング技術など時代ごとに求められる価値を常に探求し続けています。

これらを支えてきたのは、当社のモノづくりに息づく“TSフィロソフィー”であり、その根幹となるのが企業理念の「人材重視」「喜ばれる企業」です。社員一人一人が活き活きと働き最高のパフォーマンスを発揮することで、常に今に縛られず、今を超える、新たな価値を創造し、世界中の皆さまに喜んでいただける商品を提供するとともに、利益の一部を社会貢献活動などで社会に還元していきます。こうしたESG経営を通じて、お客さまやユーザーの方々、地域社会から求められる価値の創造に挑戦しています。

継続的成長に向けての取り組み

継続的成長にはガバナンスの観点が非常に重要な要素だと考えています。冒頭で、経営において最も大切にしていることは「品質」であると申しましたが、これは、製品・製造はもちろん、管理・運営面に関しても同様です。昨今の、燃費や品質のデータ改ざんなど大企業による不正は、これまで築き上げてきた企業の信用、ブランドをいともたやすく毀損してしまいます。

当グループでは、グローバルリスク委員会を定期的に開催し、企業運営におけるさまざまな領域のリスクを見える化し、一つ一つ潰し込みを行っています。

また、事業規模も着実に拡大し、2018年3月期は過去最高益を達成するなど、安定的に収益を生み出す体制は整ってきました。しかし、現在の自動車業界は、電動化(EV車への移行)、自動運転化(運転からの解放)、コネクテッド化(さまざまなサービスとの連携)などの技術革新の波が押し寄せています。これらにより、シートに求められる価値の変化、熾烈な開発競争、新たな競合の台頭など、大きな構造変革期を迎えています。人が乗るものである限り、シートをはじめとした内装部品はなくならない領域だと言われてきましたが、事故が起こらない「完全自動運転」が実現した時には、当社の強みの一つである安全性は求められず、例えば、家具屋さんがライバル企業になっているかもしれません。

当グループは、現状に甘んじることなく、未来の技術開発にも積極的に取り組んでおり、自動運転時代を見据え、快適な安らぎを提供するシート、乗員の健康管理や健康促進のためのエクササイズができるシートなどを具現化し、東京モーターショーで展示しました。当社では、このような大変革期を勝ち残れる、新たな価値創造に投資を行っていきます。

そして、新たな価値創造の重要な原動力とも言えるのが人材だと考えます。人材は「育てるものではなく、育つもの」であり、人の成長とは、それぞれが本来持つ「自律」の力を活用することが最も早く確実な道です。社員の自律的な成長を促すために、一人一人が自らの成長を実感しながら働ける仕組みをつくっていきます。全員があらゆる案件や課題に「わが事」として活き活きと取り組みながらステップアップしていく、その結果として新たな価値創造につながり当社の継続的な成長力が生まれていくと確信しています。

例を挙げると、2017年11月に開催された第45回東京モーターショーで展示しました「有人宇宙船シートコンセプト」は、次世代リーダー(管理職候補)の輩出を目的とした「TS Camp」という独自研修制度での成果発表の一つがきっかけでした。研修の中で、枠に縛られない自由な発想からテイ・エス テックをより成長させるための新たな価値を創造するというテーマの下、ある社員が提案したアイデアが発端となり、東京大学とJAXA(宇宙航空研究開発機構)による「社会連携講座※3」に参画することになりました。当社は、自動車用シートの開発で培ってきた安全評価技術を活かして、有人宇宙船の乗員安全評価法開発・シート安全設計の研究開発に携わり、提案者の社員には社内のプロジェクトリーダーとして活躍してもらっています。

これはあくまで一例ですが、このように、事業成長を支える人材を世界各地域で生み出せる環境を整えていきたいと考えています。また、経営トップとして、これからの企業運営を担う人材を輩出し、次世代にテイ・エス テックグループを引き継いでいくことが重要な使命だと考えています。

※3 社会連携講座:大学が公益性の高い課題について、民間機関などから受け入れる経費などを活用して大学院組織などに置かれる講座

ページ上部へ

Copyright © TS TECH CO.,LTD. All Rights Reserved.